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内部統制

Vol.172 内部統制とガバナンスの違い

ビズサプリグループの三木です。

今回は、前回のメルマガに引き続き、内部統制自体のややこしさやガバナンスとの違いについて考えてみます。
なお、本メルマガ中ではコーポレート・ガバナンスのことをガバナンスと略記します。

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■ 1.内部統制のガバナンスの違い

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内部統制とガバナンスの違いは、実は単純に説明し難いところがあります。
経営者の暴走を食い止めるのはガバナンスの役割ではありますが、J-SOXにしても経営者による粉飾決算を食い止める役割が期待されていますし、内部統制の内容にも取締役会や監査役などガバナンスの主役が登場します。

両者の違いは範囲というよりも、その主眼にあります。ガバナンスは株主や取引先や地域住民などの利害を調整し企業価値を高めるための仕組みに主眼があるのに対し、内部統制はそうしたガバナンスのもとで間違いを防止しつつ効率的に業務を進めていくところに主眼があります。ガバナンスが優れていても内部統制がボロボロでは現場が的確に動きません。内部統制がピカピカでもガバナンスの段階で利害関係者を無視していては良い企業経営にはなりません。

ガババンスは企業価値の向上や(適度な)リスクテイクを促す攻めの側面が強く出ているのに対し、内部統制は誤りや不正の防止という守りの側面が強く出ている傾向があります。これは、内部統制は度重なる企業不祥事に対応する形で発展してきたのに対し、ガバナンスは(わが国では)取締役会に適度なリスクテイクを促してROEなどの向上を図る社会的なニーズのもとで発展してきた背景も関係していると思われます。
もちろん、これは程度の問題で、内部統制が攻めないわけでもなく、ガバナンスが守らないわけでもありません。リスクとリターンをよく考えるというリスクマネジメント的な考えは内部統制でもガバナンスでも変わることはありません。

言葉の定義を突き詰めると本当にややこしく、混乱してきた方もいるかもしれませんが、結局のところ両方必要なので過度に区分にこだわっても仕方がないとも言えます。

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■ 2.内部統制をめぐるややこしさ

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前述の通り、金融商品取引法と会社法の両方で別々に内部統制に言及しているため、少しややこしいことになっています。

金融商品取引法については、金融庁が「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」の中で、4つの目的と6つの構成要素から構成されるという内部統制の定義をしており、その上で財務報告に係る内部統制についてJ-SOXという制度を作っています。

一方、会社法では金融商品取引法とは別個に内部統制の定義をしています。具体的には、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」(会社法第362条第4項第6号)と記載されています。
その上で、資本金5億円以上または負債額200億円以上で取締役会がある株式会社は、取締役会でこの体制を決議しなければなりません。これは「内部統制システム」と呼ばれています。

こうした背景から、内部統制という言葉は
・(本来の)内部統制
・(J-SOX、すなわち財務報告に係る)内部統制
・(会社法の)内部統制システム
のように、微妙に異なる使い方がされている言葉です。

このうちJ-SOXについては、基準を読んでもJ-SOXが内部統制の一部であるという関係は正しく記述されています。内部統制をJ-SOXという意味で使っているのは、言ってみればよくある間違いといえます。

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■ 3.会社法と金融商品取引法の内部統制な別のもの?

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金融商品取引法(言い換えれば金融庁)は内部統制の概念から定義をして、会社法(言い換えれば法務省)は会社の機関設計の関連から定義をしているため、現状では金融商品取引法と会社法で別々の言葉で内部統制のことを説明しています。
とはいえ、両者は実質的には同一のもののはずです。

この泣き別れ状態のままでは分かりやすさや統一性という点で問題があるため、両者は統合されてしかるべきです。最近では、2023年4月7日に金融庁より公表された「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の中でも、両者を統合していくことが課題であると記載されています。

ビズサプリグループでは、会計分野に限らず、現実の課題を適切に把握し、業務改善を行うコンサルタントを多数有し、企業の様々な経営課題についても幅広いコンサルティングを実施していますので、ご興味がある方はお気軽にお声がけ下さい。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、有難うございました。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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