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Vol.140 働く場所と時間について (2021年9月15日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.140 - 2021.9.15━

【ビズサプリ通信】

▼ 働く場所と時間について

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ビズサプリの辻です。

開催が危ぶまれた東京オリンピック、パラリンピックが終了しました。開催にも開催方法にも様々な意見があるかとは思いますが、私はこのような環境下で変わらぬ努力をされてきた選手の皆さんの姿に感動し、そして努力を発揮できる場がなんとか確保されてよかったと思いました。一方で、「これが大歓声の中だったらどんなによかっただろう」と思ったのも事実です。新型コロナウイルスの蔓延による無観客開催は選手にとっても楽しみにしていた私たち観客にとっても仕方がないとはいえ残念なものでした。 皆様はどのように感じましたでしょうか。

仕事の仕方についてもこの1年半でずいぶん変化しました。「リモート勤務」もずいぶん定着してきたのではないでしょうか。今日はコロナで急激に変わった働き方について考えていきたいと思います。

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■ 1.リモート勤務の実態

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当初インフラも整わないまま半ば強制的になだれ込んだ在宅によるリモートワークもずいぶん定着してきたように思います。当初は自宅の通信状況や操作の不慣れもあり大混乱だったZoomやTeams等の会議システムを使った打ち合わせにも慣れてきた方も多いのではないのでしょうか。私はオンライン配信でのセミナーに慣れてきて、パソコンに向かって一人笑顔で話すことも苦にならなくなってきました。

在宅勤務によって通勤や出張の時間がかからなくなり、一つの会議から次の会議への移動もボタン一つでできることから、むしろ「リモートの方がよい」と感じることも多いのではないでしょうか。

実際にどれぐらいの方がリモート中心の働き方に変化したのでしょうか。

日本生産性本部が2020年5月から定期的にコロナ禍における働き方の調査を実施しています。これによると、テレワークの実施率は2020年5月が31.5%と一番高く、その後の調査では調査時の感染状況により多少変動はあるものの、20%前後となっています。政府からは「テレワーク率7割/5割」といった発言もあり、クライアントでも「出勤率5割」とか「出勤は週に1.2回」というお話を聞くのでもう少し高いと思っていましたが全国的にみると2割程度のようです。ただ、従業員が10,000人を超える企業においては、テレワーク率が45%となっている調査もあり大企業ほどテレワークが進んでいて、「テレワーク格差」があるという状況のようです。

半ば強制的に始まったテレワークは快適なものだったのでしょうか。これについて様々な機関がアンケート調査を実施していますが、概ね7割~8割の人が「テレワークになってよかった」と回答しています。コロナ禍という非常事態で当初は混乱があったものの、慣れてみれば好意的に受け止められているようです。

ちなみに甲南大学では、2020年度新入社員を対象に調査を実施しており、テレワークについて、87%が「働き易い」、83%が「満足している」と回答しているとのことでした。オフィスや現場等の職場での勤務をほとんど経験しておらず、また人間関係がまだ築けていない新入社員からもより高い満足度が得られているようです。「新入社員に教育の機会がなくてかわいそうだ」という声もあったかと思いますが、若い方達は、現状を柔軟に捉えて新しい環境にしなやかに対応しているのかもしれません。

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■ 2.テレワークと生産性

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またテレワークにおける「生産性」については興味深い調査結果がありました。出社時と比較した時のテレワーク時の生産性について 出社時より生産性が高まった(100%超)とした回答は16.6%にとどまり、逆に生産性が落ちた(100%未満)とした会社が64.7%と大半になりました。つまり出社するより生産性が落ちたと回答した会社の方が圧倒的に多いということになります。もともとコロナ前から労働生産性が低いことが課題となっていた日本企業にとってはさらに生産性が落ちるのは由々しき事態です。一方で同じ質問をアメリカ企業に実施したところ、100%超とした会社が41.2%であり、100%未満とした会社が15.3%ということでした。ずいぶん回答傾向に違いがみられます。

これについて当該調査の分析によれば、テレワーク時の生産性を高める要因と逆に生産性を低くする要因として以下のように整理しており、コロナの関係なく、元々あった日本企業の特徴がそのままテレワークの生産性に影響を与えているように思えます。(パーソル総合研究所 第4回新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査)

(生産性を高める要因)

〇組織風土

・結果重視の風土

・働き方のフレキシビリティ

〇上司マネジメント

・遠隔会議のファシリテートスキル

・変化受容マインド 〇個人の働き方

・スケジュール管理スキル

・問題対処スキル

(生産性を低める要因)

〇組織風土

・権威主義的な風土

・紙・書類への依存

〇上司マネジメント

・育成重視マインド

〇個人の働き方

・集団主義マインド

・遠隔コミュニケーションの苦手意識

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■ 3.時間と場所の働き方改革

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在宅勤務で生産性が落ちてしまっているのであれば、コロナが終焉すれば「元に戻る」という選択肢を取ることになるかと思いますが、そう簡単にはいかないように思います。冒頭にあったように、従業員の7割~8割が在宅勤務に満足をしており、この働き方を続けたいと思っています。

一方で家からほとんど出ることなく、ひたすら画面に向かって仕事をすることで孤独感を感じる方も多いかと思います。また家庭環境によっては在宅で集中して業務を実施できない方もいらっしゃるかと思います。クライアントの人事部の方からはこのような状況になり1年を過ぎたぐらいからメンタルに不調をきたしている従業員が増加しているという話もお聞きしました。

そうなると、一番望ましい状況というのは、在宅勤務を含むリモートワークと職場への出勤が「好きなように」選べる働き方ということになります。コロナが始まる前にも「働き方改革」ということで柔軟な働き方を認めていこうとする動きはありましたが、これは働く「時間」に焦点を当てたものが多かったかと思います。コロナで今度は働く「場所」についてはオフィスだけではないということがわかりました。時間も場所も柔軟に対応できるような働き方を模索していかなければいけないということになります。このような働き方をハイブリッドワークと称してハーバードビジネスレビューなどでも特集が組まれています。 (ハーバードビジネスレビュー8月号)

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■ 4.「どこでもいつでも」を実現するために

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「時間」に焦点を当てた働き方改革も、その目的は「生産性を上げる」ものでした。これに「場所」という軸が加わったとしても「生産性」が上がらないようでは企業としては意味がありません。「どこでもいつでも仕事ができる状態」というのが最も生産性が高い組織でないと、「単に好き勝手に仕事をするだけ」の組織となってしまいます。

柔軟性が高い働き方をしつつ同時に結果も出すためには、インフラ整備はもちろんのこと、風土改革や従業員自身の個人の自律などを促していかなければいけないということになります。また、このような環境の中で職場(オフィス)を持つ意味を再考し、それに応じた環境整備が必要になってくるでしょう。

快適な在宅勤務を経験した今、コロナが終わったら元の姿に戻ってしまっただけの組織には、変化に柔軟に対応できる人ほど魅力を感じなくなってしまい、会社を去ってしまうでしょう。この状況は今後急激な環境変化に対応しなければならない企業にとっては望ましい状況ではありません。先日NHKの「最後の授業」という番組で、立命館アジア太平洋大学学長の出口治朗氏が「ダーウィンの進化論でも強い種が残るのではなく、変化に賢く柔らかく対応した種が残ると言われている。組織も一緒ですべての組織が生き残る必要はなく、しなやかに変化・アジャイルに対応できる組織だけ残っていけばよい」という趣旨のことをおっしゃっていました。

コロナの出口が見えかかっている今、自分自身、そして自分の組織はしなやかに対応できていたかどうか振り返ってみてはいかがでしょうか。ちなみに私はオンラインセミナーには慣れてきたものの、それ以外の働き方はそれほど変化できておらずこれでいいのかと自問自答中です。

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本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
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執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
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