Vol.100 「100」という数字 (2019年7月17日)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.100━2019.7.17 ━
【ビズサプリ通信】
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ビズサプリの三木です。 このメールマガジンも今回で100号となりました。 今回はメルマガ100号を記念し、100という数字について考えてみたいと思います。
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■ 1.目盛りとしての100
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身の回りの100という数字で代表的なものの1つが温度です。0度で凍り100度で沸騰する水の性質から、スウェーデンのセルシウスという科学者がその間を100等分した摂氏という温度表記を考えました。我々の生活温度が0〜100度に概ね収まることもあって、ご存知の通り広く使われています。 0度から100度の間は、100分割でなく10000分割でも3分割でも構わなかったはずですが、セルシウスが選んだのは100分割でした。摂氏が定着した理由には、やはり100分割することで、1度が我々の日常感覚において大きすぎず小さすぎない、使い勝手の良い温度表記になったことがあると思います。
目盛りといえば、百分率(パーセント)も良く使われています。 「30%オフ!」といった安売り広告、消費税の割合は「8%」、政府の政策目標もインフレ率「2%」、企業の業績も「売上7%増」と、何かを比較するときは高確率で%表示が使われます。別に「消費税は8分」と言っても間違いではありませんが、感覚的にしっくりきません。分野によっては‰(1,000分の1)やPPM(1,000,000分の1)を使うこともありますが、やはり%表示に比べると使われるシーンは限定的です。
そのほかにも、通貨も100分割することが多いように感じます。1ドル=100セントで、1ユーロ=100セントです。日本でもかつては1円=100銭でした。また、学校のテストも100点満点であることが殆どでした。200点満点でも1000点満点でも良いのですが、やはり何も前提をおかなければテストは100点が満点と刷り込まれています。このように、目盛りとして100分割することは広く定着し、我々も慣れ親しみ、感覚的にも受け止めやすくなっています。
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■ 2.大きさとしての100
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100は、大きすぎず小さすぎず、ちょうどよい目標にもなります。このメルマガの継続発行も、10号だと目標として低すぎ、1000号だと遠すぎてやる気がなくなってしまいますが、100号だと頑張れば達成できるちょうどよい頃合いです。
英国が中国から植民地として香港を租借したとき、99年後に香港(正確にはその一部)を返還するという約束をしたことは有名です。中国語で99は永遠という意味合いを持ちますが、現実に99年は経過し、香港は中国に返還されました。考えてみれば人間の寿命もおおよそ最大100年です。100は永遠のようでありながら、人間が届く現実的な数でもあります。
政府の骨太の方針にも掲げられていた「100年安心年金」も、生涯という意味で100を使った例と言えます。100年=一生と素直に想像できるため、「105歳まで生きた人は安心ではないのか!」という揚げ足取りもありませんでした。その制度設計が10年も持たずに持続性が疑問視されているのは皮肉なものですが・・・
もっと身近なものだと100円ショップを忘れるわけにはいきません。もともとダイソーはお釣りのやり取りを省くために100円にしたと聞いたことがあります。もちろん値段と品質のバランスの良さも重要ですが、100円という分かりやすさが事業拡大に与えた影響は大きいと思います。
このように、100という数字のキリの良い大きさは分かりやすく、目標値としても腹落ちしやすく覚えやすいため、広く使われています。身の回りを見ても、百貨店、百人一首、日本百名山、百面相など、様々な言葉に取り込まれています。ちなみにどうでもいい情報ですが、芸人のアキラ100%は、駆け出しのころお盆を100円ショップで調達していたそうです。
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■ 3. 100円あたり原価
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100という数字は慣れ親しみもあって感覚的に理解しやすくなっています。そこで私が良く使っているのが、売上100円当たりのコスト構成です。もちろん、きちんとビジネスを理解するには様々な情報を見て詳細に詰めていくのが一番ですが、企業の財務諸表は金額が大きく、読み解くのに一定の知識も必要です。また、「ごく大雑把に」「短時間で」「感覚的に」会社の概略を掴むことも必要なこともあります。 ちなみに売上100円当たりのコストですから、「売上高販管費率」などの%表示の比率と数字の大きさは一緒になります。この読み替えが簡単なことも便利といえます。
例えば、スターバックス、日本製鉄、アステラス製薬の3社を比べてみましょう。
スターバックス(2018年9月期)では、売上100円あたり
売上原価 41円
販管費 43円
その他 16円
日本製鉄(2019年3月期)では、売上100円当たり
売上原価 87円
研究開発費 1円
販管費(研究開発費以外) 8円
その他 4円
アステラス製薬(2019年3月期)では、売上100円当たり
売上原価 22円
研究開発費 16円
販管費(研究開発費以外) 38円
その他 24円
となっています。 スターバックスでは売上原価と販管費が目立ちます。 販促費43円は店舗の内装や光熱費、人件費等です。100円当たり43円もがこうした費用なのですから、飲料や食事そのもの以上に、居心地の良い空間や雰囲気の提供が重要なビジネスであることが見て取れます。なお、外食産業では原材料費は30%程度と言われますが、スターバックスでは家賃を売上原価に入れていることと、フランチャイズを展開しているため、売上原価が高くなっています。
日本製鉄では売上原価87円が圧倒的に大きく、素材あっての素材産業であることが良く分かります。華美な販促活動などより、質の良い素材を、余計なコストをかけずに提供していくビジネスと言えます。
アステラス製薬では、売上100円あたり売上原価は22円にすぎません。一方で研究開発に16円を費やしています。量産している薬は低原価ですが、より効果の高い新薬を作るべく研究開発を重視していることが分かります。また、その他販管費も38円と意外と大きく、使用方法の説明や温度管理など、ただ商品を届けるだけではないビジネスであることも伺えます。
ビズサプリ通信、第100号となるまでのご愛読、誠にありがとうございます。 今後ともメンバー一同、筆不精にカツを入れつつ執筆していく所存ですので、引き続きご笑読いただけると幸甚です。