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vol.224 職場におけるコミュニケーション論

ビズサプリの辻です。
最近、「不祥事が起きた会社」の再発防止策をお手伝いする機会が多くあります。その中で、不祥事が起きた会社で必ずといってよいほど見られるのは「コミュニケーションがうまくいっていない」ということです。
再発防止策の一環で、よく職場アンケートを実施するのですが、大抵はどの職位の方からもコミュニケーションに関する不満の声が出てきます。
ご支援する中でコミュニケーションについて何かいいヒントがないか探していたところ、「職場の対話はなぜすれ違うか」(小林祐児著 光文社新書)というピッタリのタイトルの本を見つけました。本の中身すべてご紹介をすることはできないのですが、不祥事の再発防止策としてヒントになりそうなところを少しご紹介したいと思います。

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■ 1.対話が職場のコミュニケーションを救うのか?
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不祥事が起きた企業において、必ず指摘されることとして「組織の風通しが悪い」「上司にモノが言えない雰囲気」といったコミュニケーションの課題があります。
この本でも、これまでの日本企業の「あるある」の課題として
「組織の風通しが悪く、若手のエンゲージメントが低い」
「従業員が自分のキャリアを主体的に考えようとしない」
「もっと、女性が活躍できる会社にしたい」
「現場でハラスメントが続発するようになった」
「新しいことにチャレンジする雰囲気がない」

といったものがあるとしたうえで、有効な解決策として「対話」が重要視されてきたとしています。経産省が発表したいわゆる「人事版伊藤レポート」においても、「対話」という言葉が何度も出てきているそうです。

ただ、皆様の会社で「対話」うまくいっているでしょうか。

不祥事の調査報告書で「組織の風通しが悪い」となっている企業においても、人事上の施策として1on 1ミーティングやキャリア面談、心理的安全性に関する研修など対話によるコミュニケーション施策が行われていなかったわけではありません。

この本においても、対話がすべてを解決するのではなく、むしろ「対話、対話ってうるさいよ」といった対話疲れ、「対話したって意味がない」というあきらめが生じているといいます。

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■ 2.なぜ対話がうまくいかないのか
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対話がなぜうまくいかないのでしょうか。この本ではその原因の一つとして、「対話の場で本音が話されず、単に業務連絡となってしまっている」と指摘しています。実際にパーソル総合研究所が実施した「職場での対話に関する定量調査」では、会社での上司との面談や会議において、過半数の従業員が本音や本心をほとんど話していないという結果が出ています。また、「職場内で本音を話せる相手は誰か」という質問に対しては、「そのような相手は1人もいない」という回答がダントツトップだそうです。

この結果を聞いて皆様どう思いましたか?「そもそも仕事場に本音、本心なんて要らないよね」と思った方も多いのではないでしょうか。

本書においても、NHK放送文化研究所が実施した「日本人の意識」という経年調査結果を引用し、「職場で人と本気で話さなくていい」「そこそこの人間関係でよい」という人の割合が大きく増えてきていると指摘しています。この経年調査も2018年までの調査ですので、そこからコロナ禍による飲み会の減少や、リモートワークが普及した現在ではもっとその傾向が進んでいるかと思います。

このような状況で「制度としてやらされる対話」がうまくいくはずがありません。

ある大手製造業で1on1を数か月トライアルで実施し、今後も1on1を継続したいと思うかについて追跡調査をしたところ、上司も部下もトライアル開始数か月で継続希望の数字が下がったので、結局のところ導入は見送ったとのことでした。

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■ 3.そもそもコミュニケーションは「賭け」
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この本では、コミュニケーションの基本的なイメージとして「相手と分かり合えるという願望や希望が含まれているものである」といっています。一方で、人の性質として「相手の出方をみてから行動しようとするため、そのせいで、誰も何も決められない」というダブルコンティンジェンシー問題があるそうです。

ちょっとわかりづらいので、本の中で挙げている例をご紹介します。
いつもは仲良く仕事をしている同僚二人が、ある会議でちょっとした口論になった翌日の朝、会社の廊下ですれ違う二人が「おはよう!」とあいさつしようとしたときのお互いの心の内です。

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一方は、「昨日の会議できまずかったな…、無視されたらいやだし、挨拶しないほうがいいかな」と考え、
もう一方も「こっちから挨拶してスルーされたら落ち込むな。昨日のことまだ根に持っているかな」と考え
お互いが相手の反応をみてから挨拶をするかどうか決めようと考えてしまうため、両方ともに行動が決められない。

では、スムーズに挨拶ができる状況はどうかというと、お互いの心の中に「きっと挨拶を返してくれるだろう」という考えがあり、その考えが合致する場合となります。

ただ、合致しているかどうかはあくまでも「想定」であるため裏切られる可能性もあり、やはりなかなか行動がとれない。

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「おはよう!」という単純なコミュニケーションであっても人と人が相互にやりとりをするときには、いつもどこか「賭け」の要素が含まれているとしています。

そう考えると、そもそもコミュニケーションを取ろうとすること自体が「賭け」なのだから多少うまくいかないことがあって当然ぐらいに思えば、少し気軽に考えることもできるかもしれません。

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■ 4.「賭け」を意識しないで済んでいるのはなぜか?
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とはいえ、普段「おはよう!」と声をかける際、「これは賭けだな」と意識している方はほとんどいないでしょう。ごく自然にスムーズに挨拶ができる方が多いのではないでしょうか。
それほど「賭け」を意識せずスムーズにコミュニケーションができるのは「共有知識」があるからだそうです。「共有知識」とは、「相手も同じことを知っているという相手の知識についての知識」のことだそうです。なんだかややこしいですが、要は、「自分だけでなく、みんなも知っているだろうという予測」だそうです。このことをこの本では「コモン・センス」としています。

現代社会においてこの「コモン・センス」が希薄化しています。「テレビで流れているもの」でみんなが共通知識を持てた時代とは異なり、スマホでそれぞれが興味のあるものを見て、そこから各々が異なる方法で情報を得ている今、「持っている情報が人それぞれ異なる」ということが常識となっています。このようにコミュニケーションの土台となる「コモン・センス」が希薄化しているわけですから、職場において対話のようなコミュニケーションがうまくいかないのは、ある意味当たり前のことのように思います。

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■ 5.本音を話すヒント「会話のひとさじ」
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このようなコモン・センスが希薄化した中でも、ヒントとして「会話のひとさじ」ということがありました。
会話には、下記の3つのゾーンがあるそうです。

・いつも安心のゾーン
・私のひとさじゾーン
・「俺の話を聞け」ゾーン

当たり障りのないことのみを話す「1.いつも安心ゾーン」にいるため、コモン・センスも形成されず、どうしても形式的な会話、建前の会話となっていることが多いです。そうすると、職場において「本音、弱み、強み、悩み」といった要素が全く入らない対話となってしまい、このような状況で1on 1を実施しても有意義なものとはなりません。

そうした場合、「私のひとさじ」を加えるとよいそうです。少しだけ自分の思っていることを加えてみるとよいそうです。
例えば、取引先からサービスや商品の提案を受けたときに、単に「検討します。」というのではなく、「全体的にいいと思いますが、〇〇が少しひっかかります」「私は賛成なのですが、初めての取引となるため持ち帰ります」という形でちょっとだけ自分の心を開示してみる、ということです。

コミュニケーションが上手な方はこれを自然にやっているように思います。

ただ、自己開示が過ぎると「オレの話を聞け」ゾーンとなってしまうため、自分の話ばかりにならないようにバランスを取ることが大事のようです。

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■ 6.せっかくの仕事の場なので
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「結局、コミュニケーションは面倒だな」という話になるわけですが、起きている時間の大半を過ごす仕事の場において、無難に本心を隠しつつ、「賭け」のコミュニケーションをビクビクしながら繰り返すのはなんだか寂しいですよね。もちろん、この本にはは「ではどうすればよいのか」の実践もいくつかの具体例が挙げられています。ご興味がある方は手に取ってみてください。

ただ、ちょっと面白かったのが、組織不祥事といった組織の危機は本音の対話を生み出すきっかけになるとの記載がありました。単に調査報告書作成のためだけでなく、不祥事を機会に怒りや不信感を率直に吐き出し、どうすれば同じようなことが起きないか、本音のコミュニケーションができ、不祥事後の組織内の対話がスムーズにいくこともよくあることです。

不祥事自体はネガティブなことではありますが、起こってしまったことは仕方がないことですから、そこから「本音」のコミュニケーションで前向きな取り組みとなること、そして健全な企業となる大きなきっかけとなれれば怪我の功名ですよね。

本日もAW-Biz通信をお読みいただきありがとうございます。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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