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Vol.36 取締役会の責務 (2016年9月5日)

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【ビズサプリ通信】

▼ 取締役会の責務 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。ビズサプリの庄村です。

日本人選手が41のメダルを獲得したリオオリンピックも閉幕し、前例のない台風10号も通り過ぎていきましたが、まだまだ暑い日が続きます。 みなさんいかがお過ごしでしょうか?

今回のメルマガは取締役会の責務をテーマとしています。 なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。

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■ 1.コーポレートガバナンス・コード基本原則4

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2015年6月にアベノミクスでのコーポレートガバナンス・コードが上場会社に適用され、1年以上が経過しました。

コーポレートガバナンス・コードでは、それぞれの原則に対して「従うか、そうでなければ従わない理由を説明するか(コンプライ・オア・エクスプレイン)」を選択します。エクスプレインしている例が多くみられるのが「取締役会評価の実施と結果の概要の開示」(補充原則4-11③)です。 取締役会の評価項目の一つとして、取締役会の責務が挙げられます。

コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会の責務については基本原則4で記述され、そのまま引用すると、

「上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、

(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと

(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと

(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員等を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。

こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設定を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。」(基本原則4)

とあります。 ここで重要なのは、「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、」とあるように、取締役会の責務はいわゆる「守りのガバナンス」のみでなく、「攻めのガバナンス」が強調されていることです。 取締役会の主要な役割となっている3項目についても「攻めのガバナンス」を前提としたものとなっています。

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■ 2.取締役会の主要な役割

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基本原則4にある取締役会の主要な役割の一つ目は、として、「①企業戦略等の大きな方向性を示すこと」です。

これは言うまでもなく、経営者が会社のビジョンを掲げ、長期的な視点で目指すべきゴールを設定することが取締役会の役割です。 会社のビジョンは経営理念に反映され、それが行動規範や倫理規則等に落とし込まれます。また、将来会社が目指すべく長期的なゴールは中期経営計画として数値化されます。中期経営計画はそれが利益目標となり、会社全体がその目的を達成するためのアクションを策定します。

また主要な役割の二つ目は、「経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」です。これはまさに「攻めのガバナンス」です。企業価値の向上を目指し、価値創造を持続しようとすれば必ずリスクを伴います。そこで会社はリスクを取って行動することによりイノベーションの発生や競合他社との競争に勝利できるのです。したがって、取締役会は経営者による適切なリスクテイクの環境を整備し、リスクマネジメントを行っていくことが責務となります。

主要な役割の三つ目は、「独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員等を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと」です。これは会社法に定めもある取締役の職務執行の監督です。とはいえ、社内から昇進してきた取締役は昇進を手伝ってもらった上司(経営者)に口をはさむことは現実的に難しいこともあり、独立社外取締役が力を発揮することが期待される役割です。

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■ 3.機関設計別の取締役の責務

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監査役会設置会社、指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社のいずれの機関設計であっても、「2.取締役会の主要な役割」は変わるものではありません。しかし当然ですが設計した機関によって取締役会の責務の強弱が違ってきます。

監査役会設置会社での取締役会の職務は、会社の業務執行の決定、取締役の職務執行の監督、業務執行を行う代表取締役の選任及び解任です。また、取締役会のメンバーの中には業務を執行する取締役と、その監督をする取締役の両方が存在します。

したがって、モニタリング機能の相当部分は監査役に期待されています。したが って、指名委員会等設置会社に比べ、取締役会はマネジメント機能が強く、モニ タリング機能は弱くなっています。

指名委員会等設置会社の取締役は原則として、会社の業務の執行はできません。業務の執行は執行役に委ねられます。また一定の重要事項を除き、取締役会の決議によって、業務執行の決定を執行役に委任することも可能です。

このように、指名委員会等設置会社の取締役会は執行権限を執行役に委ねているため、マネジメント機能よりもモニタリング機能重視の取締役会となります。監査等委員会設置会社はちょうど指名委員会等設置会社と監査役会設置会社の間の位置づけの形態の会社です。取締役会の責務の内容も両社の「いいとこどり」を狙ったのもと言ってもよいでしょう。

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■ 4.監査役会設置会社での監査役と取締役会の役割

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監査役会設置会社では、監査役(会)によって監督機能が十分に担保されているのに、なぜあえて取締役会での取締役を監督するのでしょうか?

それは、監査役には法律上、適法性監査の権限しか与えられず、妥当性の監査は行えない、もしくはその機能が極めて限定されるためです。また、監査役には取締役会における議決権がないため、ガバナンス上特に重要な代表取締役の選任解任に直接的な影響を及ぼすことができず、けん制が効きづらいためです。

取締役には取締役会での議決権がありますが、特に経営トップの部下であることが多い社内取締役には経営トップの選解任の行使は期待できません。このため、社内にしがらみのない独立社外取締役を充実させて、ガバナンスを強化することが求められているのです。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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