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Vol.35 オリンピックから気付かされること (2016年8月17日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.035━2016.08.17━

【ビズサプリ通信】

▼ 引き続きオリンピックの話題です

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こんにちは。ビズサプリの花房です。

オリンピック閉会まであと数日となりました。日々の日本人選手の活躍を見ようと、寝不足の日々が続く方も多いかと思います。日本人選手の活躍は、萩野選手の金メダルを始め、男子体操では団体金メダル、個人総合での内村選手の金メダル、男子柔道でも初の全7階級でのメダル獲得等、メダルラッシュが続いています。そして男子テニスでは何と96年ぶりの快挙ということで、錦織選手が銅メダルを獲得しました。この勢いだと、メダル獲得数の目標30個は越え、2004年のアテネの37個、2012年のロンドンオリンピックの38個にどれだけ迫るか、期待したいところです。

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■ 1.オリンピックから気付かされること

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まだ日本人選手の出る競技が全て終わったわけではないですが、圧巻だったのは何と言っても、内村選手の2大会連続金メダルではないでしょうか。世界選手権6連覇を入れると合計8連覇ということで、8年間も男子体操で世界の頂点に居続けるのは並大抵のことではありません。そしてオリンピック開催中の8月7日、大リーグではイチロー選手がメジャー通算3千本安打の大記録を達成し、日本人初の大リーグの殿堂入りも確実視されています。

このような偉業の裏側には、日々のトレーニングの積み重ねがあるのは言うまでもありません。もちろんそれぞれの分野での才能は必要でしょうが、常に向上心と情熱を持ち、また良きライバルがいて、結果を振り返ると、頂点を極めていたということだと思います。

このようにトップアスリートとして称賛を浴びる人、それで食べていける人はほんの一握りで、その下には膨大な人数のプロ、そしてアマチュアのアスリート達がいます。皆が同じように努力をしても、勝負事は必ず勝ち負けがあり、それは気力・体力・時の運など様々な要素に左右されるのですが、試合の日に一番高い能力を引き出せるよう、気力や体力のピークの照準を合わせられるのが一流選手の最低限の条件で、そこに時の運と言った不確実な要素が加わります。

もちろん、勝てない選手、万年補欠の選手、プロになれないアマチュアの方達など、努力が最終的に結果として報われないことの方が圧倒的に多い訳ですが、しかしその方達が努力してきたことは決して無駄ではなく、集中力の高さだったり、礼節といった基本動作だったり、いざというときの判断力など、その後の人生に必ず影響を与えていると思います。

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■ 2.オリンピックの未来像

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最近は、ポケモンGOに代表されるように、拡張現実(AR:Augmented Reality)や仮想現実(VR:Virtual Reality)の話題が高まってきました。人口が増えて物理的な世界がどんどん狭くなっていくこととも相まって、資源をあまり消費しないこれらの新たな世界の拡張は、時代のニーズに合っている気がします。何度も繰り返し疑似体験ができるこのような仕組みを使って、新たなトレーニング方法もこれから考案されてくるでしょうし、スポーツ選手もこれらの技術を積極的に取り入れて行くかもしれません。

また最近はロボット産業に進出する大企業やベンチャー企業が増えてきていて、今までは工場などごく一部でしか見られなかったロボットという存在が、今後は日常生活のいたるところに当たり前のように出てくる近未来が予想されます。最近は小売店でソフトバンクの『ペッパー』が受付などに置かれることが増えてきており、発売当初は物珍しさで人が集まっていましたが、最近は『ペッパー』が立っていても通りすがりの人に無視されている光景を見ると、ちょっとかわいそうな気がします。それだけ人間味のあるロボットとして上手く出来ていることなのでしょうか?

今後AR/VRとロボットが融合していくことで、ガンダムのように人間がロボットに乗り込む、あるいは遠隔で人間がロボットを操作し、ロボット同士を競わせるような、馬術やポロ競技の進化版、ロボット版格闘技と言ったものが将来登場する可能性を考えてしまいます。技術の発達により、従来は空想の世界、漫画の中だけの話だったものが、現実に登場する可能性も出てくるでしょう。

毎回競技の入れ替えがあるとは言え、しかし紀元前に行われていた古代オリンピックが起源とされ、100年以上続く由緒ある近代オリンピックが、人間の肉体の限界に挑戦することを趣旨として貫くならば、ロボットが乗り物としてでも競技の中に登場することはないでしょうか。

ただ、実際に競技場で直に見なくても、自宅のテレビで臨場感を持って、単なる映像を超えて体験ができるような技術は、今後の技術革新によって可能となり、オリンピックの楽しみ方が変わりうるかもしれません。

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■ 3.ソフトバンクによるARM社買収について

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話しは変わりますが、ちょうど1ヶ月前の7月18日に、ソフトバンクグループの孫社長は、イギリスの半導体設計大手であるARM社を日本円換算3.3兆円で買収することを発表しました。これは株式市場においてネガティブな驚きをもって評価され、発表後の週明け7月19日の株価は5,387円と、買収発表前の6,007円から1割下落し、10日ほどは5,300円前後の株価水準でした。

しかしその後、第1四半期決算発表の7月28日以降は上昇基調に転じ、昨日の終値で6,802円と、買収直前の株価から13%増し、買収発表直後の5,387円からだと26%も増加しています。ARM社の買収が今後どのようなシナジーをもたらし、どの程度の貢献があるかはっきりはしていませんが、既存事業の業績の固さが安心感をもたらしているのかもしれません。

実際キャッシュ・フローで見ると、ソフトバンクはこの第1四半期で約6,800億円のEBITDA(償却前利益)を稼ぎ出していて、単純に年間ベースだと2.7兆円規模のキャッシュを生み出しています。2016年3月期通期の年間EBITDAは2.4兆円でしたから、仮に毎期2.5兆円のキャッシュ・フローを生み出せれば、2016年6月末の有利子負債合計12.3兆円に、今回のARM社買収で新たに借り入れるとされる1兆円の合計13.3兆円は、約5年ちょっとで返済できる計算です。

もちろん既存事業の設備投資を継続的に行わなければならず、特に経営再建中のスプリントは今後も積極的な設備投資が必要であり、今回のARM社の買収によって、経営立て直しが遅れるのではないかといった懸念も当初の株価下落の要因にあったようですが、冷静に現状のキャッシュ・フロー水準を見ると、借金の絶対額は巨額であるものの、返せない金額ではないということが分かってきたということでしょうか。

またソフトバンクは虎の子のアリババ株も未だ発行済株式の32%を所有しており、持分法適用会社であるためソフトバンクのB/S上の簿価は1.2兆円に対して、上場を果たしたアリババ株の時価は、7兆円ほどあるので、仮に現在以上の株価のまま売却できれば、借金は半減できることになり、その安心感もあるのかもしれません。

いずれにしても今後は、投資家の期待通り既存事業の成長を維持し、スプリントを見事に再生させ、新たにグループに取込むARM社のシナジーを最大限に発揮できるかが焦点になって来るでしょう。特にシナジー効果についてはソフトバンクの既存事業との直接的な結びつきが見えない中、孫社長は「囲碁でいえば飛び石。10手先、50手先を考えて打った」と説明されています。おそらく常人には 考えもつかないような未来図を孫社長は描いており、その中では着実にARM社の果たす役割は重要だということでしょう。

あるビジネス誌においても、ARM社はIoT時代のプラットフォームの中核の1つで、もちろんそれだけではプラットフォームを作り上げることはできないが、重要な要素の1つであり、今後足りないものを継ぎ足して行ってIoTのプラットフォームを作り上げて行くような趣旨の発言をされていました。そしてそれが AI(人工知能)とも繋がっていくと。ソフトバンクの開発したロボットである 『ペッパー』は感情エンジンを持つAIを備えたロボットで、これがARMの技術と最終的にはシナジーを有し、我々の生活にとって意義のある新たなものが生み出されるということでしょう。

優れた経営者の方は、いつも時代の数歩先を予測し、そこで必要とされるものを開発することで、会社を成長させてきました。事業意欲と言ってしまえば簡単ですが、おそらくもの凄い執念をもって時代を変えて行く気概を備えないと、大事を成すことはできないと思います。そしてそのようなこだわりというか意識の高さは、トップアスリートにも通じるものがあると思います。いつの時代も常人には理解しがたい発想は、ともすればほら吹きやペテン師、ドンキホー テ的と言われ兼ねないですが、自分の描いた世界を信じ抜くことで何かをやり遂げた例は数えきれません。

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■ 4.志をもって努力することの大切さ

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スポーツ選手の話に戻りますが、その世界で一流になるには努力は絶対に欠かせません。それはただやみくもに連取するわけではなく、スポーツ科学という言葉もあるように、理論的に正しい練習を考えながら行い、かつ何かをやり遂げようという志、すなわち高い目標意識を持って取込む必要があります。そしてそのような形で努力することは、ビジネスで成功するためにもやっぱり必要 なことだということです。

ある程度物事が出来るようになると、人間というのは少しでも楽をしたがる生き物なので、気を抜くとついつい惰性で仕事を回しがちになります。そうすると単純作業に近いものになってきて、面白味もかけてくると思います。やはり仕事とは常に変革するつもりで、考えながら取り組み、それに必要な足りないものを勉強したり、新しいことを取り入れると言った、たゆまぬ努力が必要です。

オリンピックは4年に1度の祭典ということもあり、日本人選手の活躍や、世界の注目選手の技等、限界まで挑む人間離れしたプレーを見るだけで十分面白いのですが、その裏側には1日も休まず練習を続けている姿があることを想像すると、頭が下がる思いになるとともに、自分自身が最近ちょっと努力が足りないんじゃないかと反省したりして、少し心に活を入れるいい機会となりました。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
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その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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