vol.223 中長期思考について
皆様、こんにちは。アカウンティングワークスの花房です。
今月4月7日に、今年度の国家予算が成立し、一般会計は122兆円と前年度比7兆円増と、過去最大規模となりました。但しこれは、昨年末のもので、今年に入ってからの原油高騰による対策費などは含まれていないようです。余談ですが、今月の2日からレギュラーガソリンで1リットル当たり約50円の政府補助が含まれているようですので、最近の価格が160円ちょっとであることを勘案すると、補助がなければ200円を超えていることになります。
「責任ある積極財政」を標榜する高市内閣ですが、今年2月の総理大臣施政方針演説の中において、『政府の予算の作り方を根本から改める』として、複数年度予算の可能性に触れています。特に、GDPの成長にも資する危機管理投資、成長投資などについては、予算上、多年度・別枠で管理する仕組みを導入するとしています。
国や地方公共団体は、毎年の収入の中で支出を完結しなければならない「予算単年度主義」により、1年ごとに毎年の支出を決めなければならない、逆に言えば、将来の支出は決められない、ということになります。これは財務の健全性の観点から望ましいとされていますが、実際は毎年のように補正予算が承認され、2025年度では18兆円の補正予算を当初予算の115兆円に加えると、一般会計での予算は、最終的には133兆円に膨らんでいます。
補正予算には、予見出来なかったものや、災害等への一時的な対応もあり、当初予算から膨らむことは仕方がないといえますが、逆に当初予算がついているから、本当は急いでないものでも当年度中に使い切らなければならない等、単年度で収支を管理することの弊害もあります。いずれにしても単年度主義は短期視点の考え方であり、一般の企業では当たり前である中長期計画のような長期的な目線に立った支出計画を立てられません。危機管理や経済成長といった戦略的な投資については、単年度予算とは異なる予算の枠組みで長期的思考で臨む姿勢の表れと言えます。
そこで今回は、中長期の思考の重要性について考えてみたいと思います。
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■ 1.日経平均6万円越え
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昨日の4月27日に、日経平均の終値が60,537円と、初めて6万円台で取引を終了しました。株高をけん引しているのは、生成AIや半導体関連の銘柄と言われていますが、期待先行の部分も多いかと思います。今週からゴールデンウィーク明けにかけては、3月決算企業の決算発表が本格化し、その動向に相場も左右されることが予想されます。
株価は基本的に、それを発行する企業の株式を買い手と売り手の需給関係、すなわち買い手が多ければ株価が上がり、売り手が多いと株価は下がることになります。では何により買いたくなるかと言えば、その企業の利益が将来継続して増えていくかどうかであり、その意味で、企業業績というのは、企業の株価を決める大きな要因となっており、そのため、上場企業は年4回の四半期決算での業績開示や、1年後の業績予想、業績予想に大きな変更がある場合の適時開示などが求められています。
一方で、地政学リスクを含めた不確実性が高まり、生成AIのような全ての会社や人に影響を与える技術革新が起きている現在、どの企業も何かしらの変化を求められ、場合によってはビジネスモデルの大転換のような、構造改革が必要なケースも出てきています。構造改革には時間がかかり、特に企業規模が大きくなればなるほど、巨艦は舵を切るのに時間がかかるように相当の、場合によっては数年単位での時間が必要でしょう。
また、ビジネスモデルによって、利益創出の時間軸も異なります。例えば、すでにロングセラーの大衆商品を数多く保有している大規模なB to Cビジネスであれば、一定の売上や利益は見込みやすく、外部環境の急激な変化が業績に与える影響は小さいかもしれませんが、技術志向のベンチャー企業で、世の中を変えるような画期的な製品やサービスを世の中に送り出すことが出来れば業績も急成長しますが、その開発期間が数年規模、10年単位のビジネスモデルもあります。後者のような会社は、四半期決算のような短期的な業績で判断すべきでなく、技術力・開発力と、中長期的な時間軸での判断が必要でしょう。
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■ 2.生成AIの台頭
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ITの世界などはドッグイヤーと言われて久しいですが、ここ最近での生成AIの進歩には目を見張るものがあります。日経新聞記事によると、東京のAIベンチャー企業ライフプロンプトが河合塾と合同で実施した東大理系の入試試験を生成AIに解かせる調査で、オープンAI、Gemini、アンソロピックのAIモデルいずれもが、東大理科3類の合格水準を達成したとのことです。単純比較は出来ませんが、同様の調査において、昨年はオープンAIの生成AIモデルで374点であったところ、今年は503点と大幅に進歩しているようです。
また、実際に自分でも生成AIに触れる機会は多いですが、オンライン会議から書き起こした議事録などは、この半年程度の間でも、そのまとめ方や精度が進歩しているのを体感します。ドッグイヤーという言葉は、犬の1年が人間の約7年に相当するという「7倍速く進む」ことを意味しますが、直近の生成AIの進歩はまさに日進月歩、日々もの凄い勢いで進歩しており、果たして人間がその進歩についていくことが出来るのか、という疑念さえ浮かんで来ます。
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■ 3.地球規模の時間軸
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先週月曜日に青森県沖で最大震度5強地震があり、昨日まで、北海道・三陸沖後発地震注意情報が出されていました。これは、日本海溝・千島海溝沿いにおけるエリアでマグニチュード7以上の地震が発生した場合、その後にさらに大きな地震が発生する可能性があることから、地震発生から1週間、注意喚起のために出される情報です。2011年の東日本大震災は、マグニチュード7.3を記録した約2日後の3月11日に、マグニチュード9.0、最大震度7の地震が起きています。
しかしながら、1週間経過したから、後発地震のリスクがなくなる訳ではありません。北海道の根室沖から東北地方の三陸沖の領域では、最大クラスの津波が約3~4百年間隔で発生すると考えられており、17 世紀に発生した津波からの経過時間を考えると、最大クラスの津波を伴う地震が切迫していると言われています。また、千島海溝においてマグニチュード9クラスの巨大な地震が今後 30 年以内に発生する可能性は、約7%~40%(令和4年1月1日現在)とされているようです。
南海トラフ地震は、過去1,400年間で、約90〜270年(平均120年程度)の周期で発生していて、現在は昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から約80年が経過していることから、今後30年以内に発生する確率が「60~90%程度以上」または「20~50%」(発生確率の計算モデルの違い)とされています。
また、富士山は世界遺産にもなっている観光名所ですが、実態は活火山であり、過去約5,600年間で約180回噴火しており、平均すると約30年に1回の頻度で噴火してきた計算になります。前回は1707年の宝永噴火ですから、300年以上活動がないため、いつ噴火してもおかしくない状況とされています。
このような状況を踏まえると、地球規模での10年や100年と言った単位は誤差でしかなく、火山帯の上にある日本においては、地震や噴火はいつ起きてもおかしくないと、改めて認識しておく必要があります。
よく言われる例えですが、地球が出来て46億年と言われていますが、その長さを1日に(24時間)に置き換えた場合、地球誕生を「0時00分」とすると、我々人類であるホモ・サピエンスの登場した20万年前は「23時59分56秒」となり、わずか4秒程度の長さしかありません。それだけ短い時間に、人類は幾何級数的に爆発的なスピードで進歩と共に地球の資源を大量消費し、地球環境に多大な負荷をかけていることを思い返すと、生成AIの活用を推し進めていくことが本当に正解なのか、と疑問も涌いて来ます。
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■ 4.おわりに
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人類の進歩は、生活を便利にし、寿命も伸ばしてきました。それでも、人生100年と言われる現在の日本人の生きられる長さは、地球規模の時間で見れば一瞬、人類史で見ても僅かな期間であると思い描き、短期的な思考ではなく、長期思考で考えるべきであることの重要性に1人1人が気付けば、SDGsが本当に機能するのではないかと思います。
ゴールデンウィークは、どこへ出かけても人混みの多さに辟易しがちですが、可能なら自然の雄大さを感じられるところへ出かけ、「畏怖の念」を感じてみたいところです。
本日もAW-Biz通信をお読みいただきありがとうございます。




