Vol.108 「強いチーム」になるために (2020年1月15日)
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【ビズサプリ通信】
▼ 「強いチーム」になるために
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ビズサプリの辻です。 2020年の年が明けました。少し遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年が皆様にとって素晴らしい年になりますように。
さて、今年は何と言っても東京オリンピックの年です。メインスタジアムである国立競技場も完成し、チケットの抽選も着々と進み(全く当選する気配はありませんが…)、ポスターのデザインも発表され、徐々に近づいてきている感じをひしひしと感じます。 スポーツの世界で「強くなるために必要なこと」「強いチームになるために必要なこと」は、ビジネスに通じる事が非常に多く、監督や選手の名言や格言は多くの書籍やビジネス雑誌で紹介されています。今日はその中で「強いチーム」についてお話ししていきます。
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■ 1.ONE TEAM
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今年の東京オリンピックに先立ち、2019年はラグビーワールドカップで大変盛り上がりました。私自身もすっかり「にわかラグビーファン」となりテレビにくぎ付けでした。そのラグビーの日本代表チームのスローガンであった 「ONE TEAM」という言葉は、昨年の流行語大賞にもなりました。その言葉が表す「一丸となって目標に進む」という概念は、ビジネスにも大変通用しやすく、急に「ONE TEAMになって頑張ろう!」といった使い方をされているといったことがビジネス雑誌の記事でも紹介されていました。
ただ、当たり前のことですが、「ONE TEAMになろう」と掛け声をかけたからといってすぐにONE TEAMとなれるわけでもなく、それどころか、「ONE TEAMすべてを犠牲にしてついてこい」「ONE TEAMだからリーダーのオレに反論するな(又はそれに近い言葉)」というようなニュアンスで使っていると逆効果となってしまいます。
そもそもリーダーについていくだけのチームは強くなれません。チームや組織には強く優秀なリーダーがいることは重要ですが、それだけではリーダーの力量でチームや組織の限界が決まってしまいます。チームや組織にいる各個人がその強みを心置きなく発揮できるような信頼関係や関係性を築くことで、チームや組織であることの相乗効果を発揮し、それでこそ「ONE TEAM」としての意味を成すことができるのです。前述のラグビーであればスピード、瞬発力、突破力、キック力等各選手が持つ強みをお互いが理解し信頼し、尊重をしながらリーダーの戦略に沿って力を発揮していく状態になるでしょうか。
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■ 2.各個人の個性を生かすには
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それではチームや組織にいる各個人がその強みを心置きなく発揮できるような信頼関係や関係性は何に裏付けられて築かれていくのでしょうか。それには「心理的安全性」という要素があります。心理的安全性とは、「チームにおいて、自分が発言した内容で、それよって恥じたり、拒絶したり、罪を与えたりすることがないといった確信を持っているような状態」のことであり、心理的安全性が保たれた組織とは「組織にいる全員がそのように感じている状態」を指します。
もともとはハーバードビジネススクールのエドモンドソン教授が論文の中で「手術に成功している心臓外科チームにある要素」の中の一つとして心理的安全性を指摘しており、その数年後には「恐怖は学習意欲を阻害する」といった論文で心理的安全性がチームの成長に必須の条件であると主張したものです。
それが最近、Googleが自身の生産性を向上させるプロジェクトにおいて「成功しているチームの要件」として効率的に業績を上げているチームに共通する特性を抽出して分析する中で、業績が優秀なチームの特性は「メンバーの能力や働き方によって生産性が左右されるのではなく、他者への心遣いや、どのような気づきも安心して発言できるという心理的な要素が、生産性に影響している」と発表し、再度注目を浴びるようになった概念です。
皆さん自身の経験を鑑みても「ここのチーム(部署・メンバー)では、自分は信頼されており、何を言っても尊重し、受け止めてもらえる」という時と「ここのチーム(部署・メンバー)では、何かまずい事を言ったら批判される、バカにされる」という時と、どちらが他の人の話にしっかり耳を傾けた上で、自分の意見を落ち着いて発言する事ができるか、そしてアイディアや懸念事項を適切に正しく伝える事ができるかは明らかですよね。 皆さんの職場や、皆さんがリードする会議は心理的安全性が保たれているでしょうか。心理的安全性を保つための工夫は何かされていますでしょうか。
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■ 3.心理的安全性を保つには
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心理的な安全性を保つためには具体的には何をすればいいのでしょうか。「心理的安全性を高めるために必要なこと」とWEBで検索すると様々な対処法が出てきます。一言でいうとコミュニケーションの質を高めるといったことが主流の対処法のようです。例えば、非常に昭和的ではありますが、「社内運動会や飲み会の再評価」といった職場外でのコミュニケーションの充実を図るといったことを書かれた論文や、会議の場で意図的に反論を言う役割である「悪魔の代理人(Devil’s Advocate)」を設けて、反論と議論を重ねるといった会議手法を紹介したもの等様々な対処法が載っています。
但し、注意をしなければならないのは、他社で成功した手法やネット検索でヒットしたコンサルタントが提唱している手法を「そのまま当てはめる」と逆効果となる可能性もあるということです。心理的安全性を研究した調査では、職業や職位によって心理的安全性の感じ方は異なり、また、組織のダイバーシティーの進み度合によっても心理的安全性によってもたらされる影響の度合いが異なってくるといった結果が出ています。(RMS message 2017年11月 組織の成果や学びにつながる心理的安全性のあり方 レビュー1 心理的安全性の効用と今後の研究課題より抜粋)
つまり、 Googleでうまくいった取組がそのまま自社でもうまくいくわけではないということです。むしろ形式だけを真似することで「カーゴカルトの罠」に陥り、逆効果ということになりかねません。チームや組織のどこにどんな問題点があって何をどう変えていけばいいのか、実践しながら考えていくことが必要です。
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