メールマガジン

メールマガジン

会計

Vol.66 仮想通貨取扱のルール (2017年12月21日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.066━ 2017.12.21━

【ビズサプリ通信】 ▼ 仮想通貨取扱のルール

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。ビズサプリの庄村です。

すっかり寒くなり忘年会やクリスマスなどイベントも多く多忙を極めている方も多いと思います。 2017年最後のビズサプリ通信は仮想通貨をテーマにしたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.仮想通貨とは

----------------------------------------------------------------------

最近はビットコインや仮想通貨という言葉を新聞やTVニュース等でよく見かけます。 仮想通貨はもともとオンラインゲームの「おもちゃのコイン」から派生したもののようですが、実体を持たないバーチャルなお金です。

資金決済法上で仮想通貨は、次のいずれかに該当するものとして定義されています。 ①代価の弁済のために不特定の者に対して、使用することができ、かつ、不特定の者に対して購入及び売却ができる

②電子機器その他のものに電子的方法で記録され、移転できる

③法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)でない

仮想通貨にはいろいろな種類があり有名な仮想通貨としてビットコインがあります。 送金手数料が格段に安いため、仮想通貨は海外送金等の送金手段として使用されることが多いです。中国では人民元の海外への資金移動制限があるため外国との資金決済で仮想通貨の便利さが評価されてきましたが、当局がビットコインの取引所を閉鎖するなど国家による統制もあり、今後の行く先が不透明なところもあります。

また、仮想通貨の価格は取引所で「いくらで売りたい人」と「いくらで買いたい人」という人がうまくマッチングして取引が成立する相対取引で決まるため、価格は常に変動します。したがって、投資手段として使用されることも多いです。価格が下がったときに買って上がった時に売れば、その差額が儲けとなります。まだ取引の歴史が浅いこと等もあり、価格の上げ下げが激しいようです。

さらに最近の新聞紙上をにぎわしているように仮想通貨は飲食店や家電量販店等のお店での支払手段として使用されています。国内ではまだ利用できる店舗は限られているものの1万店舗以上で使用されているようです。

仮想通貨の代表格であるピットコインの支払いは「ウォレット」という専用アプリを通じて行います。お店でビットコインアドレスのQRコードを発行してもらい、それをスマホで読み取って利用代金を送金するのみで、現金やカードが不要でスマホさえあればその場で支払が完了します。ウォレットにある残高の範囲内で送金ができます。

仮想通貨はクレジットカード、Suicaやnanaco等の電子マネー、デビットカードと違い、専用のカードリーダーが不要のため、初期費用が安く済み、また仮想通貨の支払手数料はクレジットカード決済でクレジットカード会社等に支払う手数料よりも安いため、今後は大型店舗や個人商店でも導入が進んでくると予想されます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.法整備

----------------------------------------------------------------------

仮想通貨は社会生活に欠かせない存在になりつつあるので、2017年4月に仮想通貨について規定された新しい法律が施行されました。正式名称は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」であり、フィンテックに代表されるIT技術の発展などの伴う環境の変化に対応するために金融分野の法律を改正することが法制度の目的です。金融グループにおける経営管理の充実や共通・重複業務の集約等、技術革新や仮想通貨への対応といった内容が盛り込まれています。

このうち、仮想通貨への対応が盛り込まれた(改正資金決済法)が改正され、そこでは「仮想通貨とは何か」という定義しました。日本が世界に先駆けて仮想通貨を定義した法律を制定したようです。

また、仮想通貨交換会社も定義したうえで仮想通貨交換会社に対して登録制が導入されるとともに、仮想通貨交換業者にはマネーロンダリングを防ぐため、仮想通貨を取引する人に対して、銀行並みに本人確認を徹底します。また、顧客からの預かり資産と、事業の運営資金を別々に管理することを義務付けています。

さらに、仮想通貨交換業者の分別管理に伴い、仮想通貨交換会社の財務諸表監査及び分別管理の監査が義務付けられることとなりました。法整備によりいろいろな企業が仮想通貨事業に参入し、さまざまなサービスが登場して、安心・安全に仮想通貨をつかうことができるようになることが期待されます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.会計ルール

----------------------------------------------------------------------

改正資金決済法の改正により、仮想通貨交換会社の財務諸表監査が義務づけられたことを受け、企業会計基準委員会(ASBJ)は仮想通貨を利用する際の会計ルールの公開草案、実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表しました。これは2018年4月1日以降開始する事業年度の期首からの適用され、仮想通貨交換業者だけでなく、仮想通貨利用者にも適用されます。

では、会計処理はどうなるのでしょうか? 期末における仮想通貨の評価については、活発な市場の存在の有無により会計処理が異なります。活発な市場が存在する場合は、市場価格に基づく時価でBS計上し、帳簿金額との差額は当期の損益として処理します。一方、活発な市場が存在しない場合は、取得価額でBS計上します。ただし、 期末における処分見込価額が取得価額を下回る場合には、処分見込価額でBS計上し、取得価額との差額を当期の損失として処理します。

そこで「活発な市場が存在する場合」、とは「継続的に価格情報が提供される 程度に仮想通貨取引所または仮想通貨販売所で十分な数量及び頻度で取引が行 われる場合と定義されています。仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額をPLに表示します。

注記情報として以下を注記します。

・期末日に保有する仮想通貨のBS計上額合計

・預託者から預かった仮想通貨BS計上額合計

・保有する仮想通貨について活発な市場の有無に区分して仮想通貨種類ごとの 保有数量とBS計上額

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 4.税務ルール

----------------------------------------------------------------------

最後に税務上はどうなるのでしょうか?

消費税については仮想通貨の売買取引は非課税となります。これは、仮想通貨は海外でも売買することもあり、海外では消費税がかからない一方で国内取引に消費税を課すと日本でピットコインを買う人が海外で買う人よりも一方的に不利になってしまうためです。ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却または使用することにより生じた利益は、所得税の課税対象となります。原則として、雑所得に区分され、所得税 の確定申告が必要になります。

ここで注意しておきたいのは、「売却または使用すること」の取扱いです。法定通貨に交換したときに利益が出ていれば課税対象されることは分かりやすいですが、所有ビットコインでモノを購入したときに利益が出ていれば課税取引となります。例えば、100万円で買ったビットコインが150万円となり、150万円の車を買ったときには50万円が課税対象となります。これは仮想通貨で150万円の車を買ったときに一旦100万円の仮想通貨から150万円の法定通貨に交換して利益が出たものと考えるためです。

以上のように仮想通貨の所得税の課税対象取引を把握するのが取引履歴は分かりやすく残していくように心がけましょう。 本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

過去の記事

Bizsuppli通信

会計のプロフェッショナルが、財務・経営を考える上でのヒントとなる情報を定期的にメールマガジンにてお届けしています

購読お申し込みはこちら