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Vol.2 会計の本質を考える (2015年4月15日)

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【ビズサプリ通信】 ▼ 会計の本質を考える

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ビズサプリの花房です。

今春から弊社より発行を始めたメールマガジンの第2号をお届けします。

東京でも2週間ほどお花見を楽しめましたが、先週は花冷えでかなり冷え込んだ日もありました。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、3月決算の皆様、 これから決算時期で忙しい中、体調管理にはご注意下さい。

さて2回目では、ちょっと大それたテーマですが、会計の本質を考えてみます。 なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。

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■ 1.購入かリースか?

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最近小耳にはさんだ経理の方からの話です。

製造現場の担当者がリース契約を申請して来たそうです。その内容はというと、 購入価額が数千万円の製造設備ですので、通常は5年程度の期間で総額数千万円 程度のリースのはずが、1年間で1千万円程度の契約で上がって来たそうです。 なぜか?

具体的な決裁基準は聞いていませんが、その会社では購入すれば一度に数千万 円出ていくことになり社長の決裁が必要だが、1千万円程度の年間契約なら現 場の工場長決裁で済むため、会計上のオンバランス処理の回避を目的としたわ けではなくて、あくまで社内の決裁を通りやすくするために、そのような変則 的なリース契約を締結したとのことでした。

1年契約ですから、日本の会計基準に従えば、「リース期間が1年以内のリース 取引」は重要性の乏しい取引として、賃貸借処理が可能になるのですが、本当 にそのような会計処理でいいのか?ということです。

本当に1年で終了する契約なのかと聞くと、契約上は1年で解約可能な条件には なっているものの、実態としては1年で終わることはなく相当の期間は使用を 続けるであろう、とのことで、その場合は同様の変則のリース契約を延長、あ るいは更新していくのではないか、との回答でした。

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■ 2.会計の役割と本質

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会計基準としてIFRSがいいか日本基準がいいのか、様々な議論がありますが、 それは本来の会計の目的ではなく手段であって、重要なのは会計基準として 何を採用するにしても、それによって作成された決算書で何をなすべきかが 重要です。

かねてより言われている会計の大きな役割として、決算書を通じて投資家を含 む、各利害関係者に会社の財政状態や経営成績、そして最近ではキャッシュ・ フローの状況を報告することがあります。当然それらの決算書には経済実態が 反映されていなければならないことを考えると、会計の本質は経済実態を決算 書へ適切に表現すること、ではないかと言えます。

それでは先ほどの変則リース契約をファンナンス・リース取引として売買処理 するのがいいか、それとも賃貸借取引がいいのかについて言うと、経済実態と して、当該製造設備を購入した場合と何ら変わらないのか、そうでないかです。

この変則リース契約の成り立ちが、本来は複数年にすべきところ、社内決裁を 通すことを目的に契約金額を下げるため1年契約とした経緯だけを聞くと、本 当に1年ですっぱりとその契約が終了することができるのかを疑う必要があるで しょう。仮に1年経過後の契約終了時に、1年間支払ったリース料と購入価額の 差額を支払わなければならないことになっていれば、事実上解約不能と言える ので、ファイナンス・リースとして売買処理とするのが妥当だと考えられます。

一方で1年後には、本当に毎月のリース料以外の支払をすることがなく、契約を 終了できるのであれば、短期間のレンタルのようなもので、賃貸借処理が妥当 だとの判断になるでしょう。しかし、リース会社が大部分のリスクを負うよう な巧い話があるとは考えにくいのですが。

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■ 3.経済実態を把握するために

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形式、すなわち会計の細かなルールにこだわり過ぎてしまうと、大局的な見方 ができなくなってしまいます。決算書は事業活動を映し出す鏡だと言われるこ とがありますが、その作成ルールである会計基準は、全ての事業活動や取引を 想定して作られているものではなく、ましてや物事の進むスピードが速い現代 においては、新しい取引がどんどん誕生しており、会計処理の判断に迷う事象 も多いかと思います。

ルールに書いてない場合の判断の拠り所となるのは、物事の実態に対して正し いのか?合理的かどうか?ということではないでしょうか。不自然だ、何か引 っかかる、と思うときは、大抵何かが間違っていることが多いです。

その判断をするためには、取引実態を正しく理解することが欠かせません。会 計処理を正しく行うためには、会計基準に係る知識もさることながら、取引の 実態を正確に理解しておく必要があるのです。

経理の仕事というと、本社の中にいてただ取引の結果を待っていればいいよう に思えるかもしれませんが、会社で起こっていることを自分の目や耳で確かめ るために、積極的に現場に出て行き、情報を仕入れる姿勢も大事だと思います。

余談ですが先ほどの変則リースのお話は、そもそもこれだけ低金利の時代に金 利面だけ考えると割高かもしれないリースを選択するのが経営的に望ましいか の判断が必要だと思います。購入とリースのどちらが得か、キャッシュ・フロ ーの観点も加味して設備導入の社内決裁の基準とするようマネジメントに提言 できれば、経理としても会社の利益に貢献することができるでしょう。

ビズサプリでは決算早期化や決算精度向上などの業務改善を始め、幅広く会計 コンサルティングを手掛けています。お気軽にご連絡下さい。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
内部統制
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IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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