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vol.219 街角経済学vol.6 消費税について

アカウンティングワークスの花房です。
高市早苗首相は、今月23日の通常国会の冒頭に衆議院を解散し、世間では今週末の投開票に向けて選挙活動が行われています。経済政策や社会保障、安全保障など争点がいくつかある中で、俄かに消費税減税についての注目が高まってきました。現在の政権与党である自民党と日本維新の会はともに、飲食料品の消費税について2年間を対象としないことの検討を加速することを、選挙公約に掲げています。

野党では、食料品の消費税を恒久的にゼロとしたり、消費税を一律5%としたりするような公約を掲げている政党もありますが、いずれにしろ、消費税を減免する主張が主流となっています。一方で、今回の政権与党の案だと減税規模は5兆円と見込まれており、その財源をどうするかと言った課題が挙げられています。

そこで、我々は毎日何かしら物を買ったりサービスを受けたりする都度、毎日納税している意味で最も身近な税である、消費税について考えてみたいと思います。

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■ 1.消費税の姿
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消費税は1989年4月から、竹下登内閣時に当時の国民の強い反発の下で創設されて以降、税率を上げながらも、30数年継続している税金です。日本の税制はかつて、1949年のシャウプ勧告に基づき、所得税を始めとする直接税中心の税体系でしたが、所得水準の上昇に伴って累進課税の所得税の負担が大きくなってきたこともあり、所得税の大幅な減税とセットで、国民に広く薄く負担を求める消費税が導入された経緯があります。

税を公平性の観点からみると、所得税のような直接税、特に累進課税では、所得の多い者へ多く課税する、応能負担に基づく公平性が重視されていたと言えますが、モノやサービスの消費に一律課税する消費税のような間接税は、その便益を受ける者が負担する応益負担に基づく公平性が重視されているといえます。

現在の税収規模とそれに占める消費税の割合を見てみると、今年度の一般会計予算での税収見込は77.8兆円で、そのうち消費税は約25兆円(32%)で、税収としては一番大きな財源となっており、続いて所得税22.6兆円(29%)、法人税19.2兆円(25%)と続きます。もはや間接税である消費税が一番の財源であり、所得税と法人税を合わせて、全体の86%となっています。

また、消費税は、増大する社会保障費の財源確保の観点から、社会保障と税の一体改革により、年金、医療、介護、少子化対策に充てることが、2012年に消費税法に明記されています。但し、一般会計で見ると、消費税による収入25兆円に対して、社会保障関係の支出予算は約38兆円で足りておらず、その他の税収と国債で賄われているのが現状です。従って、長年の間にせっかく税率を上げて安定的な予算の財源としてきた消費税が、2年間の限定とはいえ、与党の目論見に従って5兆円規模の消費税減税を行った場合、別の財源が手当て出来なければ、さらに国債を発行しなければならなくなる恐れもあります。

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■ 2.消費税減税の効果は?
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飲食料品に限って一時的にではありますが、仮に消費税を一時的に課税しないこととした場合、景気対策としてどの程度の効果が見込めるのか、大和総研の発表しているレポートによると、約5兆円の消費税減税に対して個人消費の喚起効果は0.5兆円程度と予測していて、巨額の減税の割に経済効果は少ないとしています。

また、日経新聞等が経済学者50人に対して行った、『食料品の消費税率をゼロにするのは、日本経済にとってマイナス面よりプラス面が大きい』という質問について、「そう思わない」(46%)、「全くそう思わない」(42%)の割合が計88%と、やはり大半は懐疑的な見方をしているようです。

飲食料品の期限付き減税が実現した場合どうなるかは、消費者マインドにある程度のプラスの影響がある反面日本の財政規律が緩むことでさらに円安になれば輸入食品そのものの値段が上がる可能性や、今回の消費税減税は外食までは想定していないので、相対的に外食需要が減る可能性もあるので、実際の影響度は未知数ではありますが、一方で一度下げた税率を戻すことへの抵抗や、その際に経済に与える負の影響、一時的であるにしろ巨額の予算の財源が減少することを慎重に考慮した上で、判断してもらいたいと思います。

さらに実務的な課題として、今回の消費税減税を非課税取引として扱うのか免税取引とするかで飲食料品を販売している事業者への税額控除の影響が大きいと考えられること、店内飲食と持ち帰り両方に対応している店舗では、現行の軽減税率の8%と10%の税率差以上に販売価格への影響が大きいこと、ITシステムの対応も必要になって来ることから、制度設計を事前に入念に行わないと、混乱をきたすリスクもありそうです。

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■ 3.公平・中立・簡素であること
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税制を考えるときに、税の3原則というのがあります。公平・中立・簡素であることを原則として、税の制度を設計するという考え方です。

公平の原則は、一般的な公平性と同じく、置かれている立場や環境、さらには価値観によっても変わりうるので完璧な公平性を確保するのは困難ですが、税制の観点からは、経済力のある人により大きな負担を求める公平性、これを「垂直的公正」と呼ぶようで、所得税の累進課税が代表的なものになります。経済力が同じであれば等しい負担を求めるのが「水平的公正」と呼ばれ、さらに最近では、「世代間の公平」の重要性が高まっていて、この点、消費税は、同じモノやサービスに等しい税金が課税されることから、「水平的公正」、「世代間の公平」とのことです。

中立の原則は、税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにする原則であり、その点、消費税の対象として飲食だけ対象とする、その中でも外食は除くことは、中立的なのか疑問に思うところです。

簡素の原則は、税制の仕組みを出来るだけ簡素にし、理解しやすいものにする原則だそうですが、消費税に限らず、日本の税制は複雑である気はします。

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■ 4.おわりに
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そもそも税金はなぜ必要なのでしょうか?特に所得税は累進性となっているので、日本の所得税は高いということで、富裕層の中には海外に移住する方もいるようです。「高い」という感覚を持つということは、支払っている金額に見合うものが得られていないことかと思います。税金は国家の収入の根幹であり、国家は何のために収入を得るかというと、個人や民間では提供出来ない公的なサービス、具体的には安価な医療や年金、介護と言った社会保障サービスや、警察、防衛と言った安全の提供、また共通インフラの整備・運用を提供するためです。

私を含む世代より若い人達は、戦時中や戦後間もない時期を知らないので、どれだけ住みやすい日本になったのかを相対的に感じることは出来ないのですが、間違いなく過去から現在までに支払われている税金の恩恵には与っていると思います。一方で、自分達が支払う税金により将来に変わらず恩恵が受けられるかどうかは、現在の国の政策に無駄や間違いがないかを監視すべき自分達に責任があると言えます。

昔からの格言で、「入るを量りて出ずるを為す」と言います。積極財政や減税は聞こえは良いのですが、収入に見合った支出でないと、サステナブルとは言えません。我々の税金を無駄遣いされないためにも、政治に関心を持ちたいものです。

カテゴリー
会計
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その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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