vol.184 街角経済学vol.3 金利と為替について
皆様、こんにちは。アカウンティングワークスの花房です。
師走となり、ようやく寒さが感じられてきた今日この頃ですが、今年も残り僅かとなりました。皆様は今年はどのような年でしたでしょうか?
私個人は、新しく勉強会に所属して、新たな分野の知識を吸収した年でした。
ドッグイヤーと言われて久しいですが、世の中が目まぐるしい変化を遂げており、旧来の知識や経験だけでは、仕事において通用しなくなってきています。
とりわけ、ITの分野においては、ChatGPTに代表される生成AIが脚光を浴びた年であると感じています。今までのAI革命やRPAと異なり、生成AIの爆発力はもの凄いものがあります。大手企業や官公庁ではいち早く取り入れているようで、それらの成功事例も出て来ています。
例えば、定型的なレポートの作成時間を短縮したり、経費精算等のルールに基づくQ&A業務を自動化する、プログラミングのコード作成等、様々な活用法が模索されています。
ところで、今年は様々なモノの値段が上がったと感じた年でもありますが、それでも日本は世界的に見ればモノの値段が安いと言われており、アメリカのニューヨークでは、ラーメンが1杯3千円もするという話を聞きます。新型コロナが落ち着き、海外から日本に来る旅行客が増えていますが、その大きな理由として、円安が進み、海外の方にとって日本の物やサービスの値段が安いことが挙げられます。
今回のメルマガでは、円高・円安と言われる為替レートと、金利の関係について考えてみたいと思います。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 1.金利と為替の関係について
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
冒頭で生成AIについて述べましたが、皆さんは、実際にChatGPTを使ったことはありますでしょうか?私は業務に取り入れているほど使いこなせていませんが、その実力をお示しすると、例えば、「金利と為替の関係を教えて下さい」と聞いたとします。するとものの数秒で、
-----
『金利と為替相場は密接に関連しています。以下に、金利と為替の関係について説明します。
1 金利差と為替相場:
・通常、高金利国の通貨は低金利国の通貨よりも魅力的です。これは、高金利国での投資がより利益が出るためです。
・投資家は高金利国で資産を保有することで、金利差益を得ることが期待されます。そのため、高金利国の通貨の需要が高まり、その通貨の価値が上がることがあります。
2 金利変動と為替相場の変化:
・金利が変動すると、通貨の価値にも変化が生じることがあります。一般的に、金利が上昇すると通貨の価値も上昇する傾向があります。
・中央銀行が金利を引き上げると、その通貨の金利が魅力的になり、外国からの投資が増加することが期待されます。これにより、通貨の需要が増え、為替相場が上昇することがあります。
3 金利予測と市場の影響:
・金利の将来の動向は市場予測に大きな影響を与えます。金利が上がることが予測されると、それが先取りされて市場で反映されることがあります。
・投資家やトレーダーは金利の変動を予測し、それに基づいて通貨の買い売りを行うことがあります。このような動きが為替相場の変化につながることがあります。
4 逆為替:
・逆に、金利が低下すると、通貨の価値も下がる可能性があります。低金利国の通貨は魅力を失い、投資家は他の高金利通貨に移ることがあります。
総じて、金利と為替相場は相互に影響し合っており、金融政策や経済指標などが変化すると、為替相場にも変動が生じることがあります。
ただし、市場は複雑であり、他にも様々な要因が影響を与えるため、注意が必要です。』
-----
という回答が出て来ます。それなりに分かり易く簡潔な文章で、人間が書くよりも圧倒的に早い時間で概略の説明文章が出来上がります。
金利と為替には相関関係があり、金利が高くなるとその国の通貨の価値が高まり、逆に金利が安くなるとその国の通貨の価値も下がるのですが、しかもそれは現時点というよりも、将来の金利予測に対して為替が動くことになります。
今年は年初のアメリカドルに対する円の為替レートは130円前半だったのが、11月には151円まで円安が進み、12月7日にはいきなり、瞬間的ですが141円まで円高に転じたように、為替の動きの激しい年でした。
昨年3月からの1年余りで、アメリカは加熱するインフレを抑制するため、アメリカのFRBが金利政策で、段階的に5%を超える利上げを実施したことで、アメリカドルに対しての需要が高まり、相対的に円安となっていました。
これに対して、今年12月7日の日銀の植田総裁のとある発言が日本が長年続けてきたマイナス金利政策を解除するのではないか、すなわち近い将来日本の金利が上がり日米の金利差が縮小するのではないかという憶測を呼び、相対的に円の価値が高まったことで急激な円高が発生しました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 2.購買力平価とビッグマック指数
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このように金利と為替には相関関係があり、金利政策に為替相場の変動が左右されることが多いのですが、為替相場は究極的には、通貨が異なってもモノの値段は同じであるべきで、為替レートはその水準に収束するはずだ、という考え方があります。貨幣が世の中に登場するまでは、人々は物々交換をしており、その前提として、交換するものの価値は同じということがあります。異なる通貨の国であっても、同じものであれば同じ価格で取引されるように為替レートは調整されるという考え方を、購買力平価説、と言います。
この購買力平価を計算する手法として有名なものに、ビッグマック指数というものがあります。ビッグマックは世界中で同じ商品が提供されているため(実際は大きさや食文化的な理由で素材が異なることもあるようですが)、その価格を比較することで、本来の為替レートが算定出来るというもので、イギリスのエコノミスト誌が毎年発表しています。
計算方法はいたってシンプルで、現在の日本でのビッグマックの価格は450円ですが(都心では500円になっているようですが、ホームページの価格を使っています)、アメリカのビッグマックの価格は5.58ドルだそうなので、450円÷5.58ドル≒80.6円、というのが、日本とアメリカでビッグマックの価格を同じにする為替レート、ということになります。
そうすると、現在の140~150円という対ドル円相場は、かなり円安ではないか?
と考えられます。これは金利差だけでなく、この失われた20年とか30年というスパンにおいて、日本はデフレと言われ、物価や給与水準がほとんど変わっていない一方で、アメリカはかなりインフレが進み、給与水準が上昇した、という状況があります。新型コロナが収束しても、海外から日本に旅行に来るインバウンドは増えても、これだけ円安だと、日本から海外への旅行は二の足を踏んでしまいますね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 3.円安はいつまで続くのか?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
円安が続くと、原油や輸入消費財の値段は上がるし、海外旅行も行きづらい、消費者にとっては有り難くない状況ですから、いつまでこの円安の水準が続くのか心配になります。僅か2年前の2021年12月のドル相場は1ドル115円程度であり、130円を超えたのが1年半前の2022年4月ですから、急激な円安になったのはつい最近のことです。15年余りのスパンで見てみると、2008年から2013年ころまでは1ドル100円を切っており、2011年~2012年は一時期1ドル80円を割っていましたから、その時の水準からすると、倍近い円安の水準、ということになります。
新興国においては、通貨の市場の実勢レートと購買力平価の乖離は2~3年しか持続しない傾向と言われているようですから、中長期的にはいずれ円高になるだろうと予想したいところですが、上述のChatGPTの回答の最後に「…ただし、市場は複雑であり、他にも様々な要因が影響を与えるため、注意が必要です」とあるように、金利差だけでなく、貿易収支・経常収支や経済政策にも影響を受けますし、本質的には、日本の競争力が高まらなければならないと思います。
少子高齢化が進む中、生産性を上げ、1人当たりのGDPを上げて行くためには、1人1人の能力を高めることがベースにあり、そのためには人材を育成し、新たな技術革新を生み出していくことが重要と考えます。私が関与している学校法人はその経営理念で、「国を作るのは人である。人を作るのは教育である」と掲げており、その通りだと思います。
最近ではリスキリングという言葉が流行りましたが、使う技術が変われば、必要な知識・スキルも変えて行かなくてはなりません。私がある講演で聞いたのは、生成AIを使いこなすのに重要なのは、プロンプト(AIに指示する質問内容)とゴール設定だということです。
生成AIがこれから世の中に普及してくるとすると、欲しい回答を如何に上手く引き出せるかが重要であり、その専門家を「プロンプトエンジニア」と言い、新たな職業となっているようです。需要は高いようなので、これから社会に出る人、若手でキャリアチェンジを考えている方は、そのような職業も面白いかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アカウンティングワークス株式会社では、常駐型の財務経理のアウトソーシングサービスを提供しています。また、決算開示や上場支援、M&Aにおけるデューデリジェンスや株価算定等、幅広いコンサルティングを実施していますので、ご興味がある方はお気軽にお声がけ下さい。
本日も【AW-Biz通信】をお読みいただき、有難うございました。