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Vol.137 スチュワードシップコードとは (2021年7月7日)

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【ビズサプリ通信】

▼スチュワードシップコードとは

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ビズサプリの三木です。

前回のメールマガジンでは改訂されたコーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)を紹介しました。 今回のメールマガジンでは、CGコードと両輪の関係にあるとされているスチュワードシップ・コード(以下SSコード)について紹介します。

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■ 1.機関投資家のあるべき姿のルール

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CGコードに比べてSSコードはあまり広く知られていません。CGコードが企業のあるべきガバナンスに関するガイドラインであるのに対し、SSコードは機関投資家のあるべき姿に関するガイドラインです。企業に勤めている人に比べて機関投資家に関わる人は少数ですから、SSコードを気にする人はどうしてもCGコードに比べて少数になります。

しかしながらガバナンスにおいて株主は重要な存在ですし、SSコードを意識する投資家とCGコードを意識する経営者が対話をすることによって企業の健全な発展を目指す意味では目指すところは同じです。このために両コードは両輪の位置づけにあるとされますし、企業側としても機関投資家が目指す姿を知ることはガバナンス上有益です。

SSコードもCGコードと同様に、原則主義(プリンシプルベース・アプローチ)で、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方を採用しています。つまり強制力を持たないソフトローであり、細かな方法は実務に任せて大原則や趣旨を示す内容となっており、原則を実施するか、実施しない場合には理由を説明することを求めています。 後述するようにSSコードは英国で基礎が作られましたが、考えてみればスチュワード(執事)という言葉自体がいかにも英国的です。この言葉づかいについても、機関投資家の単なる受託者責任より幅広い概念としてスチュワードシップという言葉が採用された背景があるようです。

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■ 2.ガバナンスと内部統制の歴史

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ガバナンスや内部統制は不祥事によって作られてきたと言っても過言ではなく、SSコードもその流れの中にあります。ここでは、そうした歴史を簡単に振り返ってみます。

■ 1991年〜 コーポレートガバナンスの基本形

1991年、英国の優良企業であったポリーペック・インターナショナル社が倒産しました。直近の決算内容からは想像つかないような倒産劇で、その後に株価操作や利益相反など役員による利己的な行動があったことが明るみに出ました。金融立国である英国はこれに危機感をいだき、何段階かにわたる委員会によってコーポレートガバナンスや株主の役割について、規範のあり方を検討しました。この結果、1998年6月にロンドン証券取引所は統合規範(Combined Code)を制定しました。今日のガバナンスの在り方はここで基本形ができたと言えます。

■ 2001年〜 SOX法による内部統制

2001年から、米国ではエンロンやワールドコムの粉飾決算が明るみに出てきて、粉飾を許さない社内の仕組み=内部統制が必要であるとの議論が高まりました。失墜した市場の信用力を取り戻す意味でも厳しい法律が必要とされ、2002年に企業改革法(通称SOX法)が制定されました。日本においても2004年に日本版SOX法が制定され、内部統制を整備することが企業の責務として明確化されました。

■ 2007年〜 スチュワードシップへの流れ

2007年から、サブプライムローンの破綻に端を発した金融危機で世界経済は大きなダメージを負いました。コーポレートガバナンスで一歩先を行っていた英国においても大きな影響があり、企業側だけでなくよりマクロな目で、株主側の規範も必要との議論が強まりました。そこで2009年に機関投資家の責任コードが制定され、2010年にはSSコードとして取りまとめられていきました。これを受け、我が国でもSSコードが2014年に制定され、2017年に改訂、そして1年少し前の2020年3月に再改訂されています。

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■ 3.SSコードの8原則

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我が国のSSコードの構成はCGコードに似ており、8つの原則と、それに紐づく指針で構成されています。8つの原則には以下のものがあります。 (要約して記載していますのでご了解ください)

1 受託者責任の果たし方の方針公表

2 利益相反に関する方針公表

3 投資先企業の経営モニタリング

4 投資先企業との建設的な対話

5 議決権行使の方針と行使結果の公表

6 スチュワードシップ責任の報告

7 機関投資家の理解力・実力向上

8 機関投資家向けサービス提供者の努力義務

SSコードはCGコードと同様に適用状況の公表を求めており、2021年5月の段階で300を超える機関投資家がSSコードの適用状況を公表しています。公表している投資家の一覧は金融庁のウェブサイトから見ることができますので、ご興味あれば覗いてみてください。

SSコードを理解する上で私がキーワードだと思うのは、「持続的成長」という言葉です。原文を見ると、8つの原則の中に「持続的成長」という言葉が3回登場しています。これは、投資家が短期的利益を追い求めたことが不祥事や経済的な危機の遠因であり、会社が、そして社会が持続的に成長するには長期的視点が欠かせないという反省がSSコードの根底にあるためです。SSコードはESG投資などの観点も取り入れていますが、ESGの観点も企業の長期的成長に資するという点で目指すところが近く、波長が合っていると言えます。

なお、直近の2020年3月の改訂では原則8が追加されました。この原則は主に議決権行使助言会社や運用コンサルタントを意識して入れられたものです。実は議決権行使助言会社は比較的寡占が進んでいる、直接投資をしていないので利益相反などの網がかかりにくい、助言内容に対する責任を明確にしにくい、といった課題があるとされていました。原則8は、それらの点を踏まえて広くInvestment Chainを規範するために追加された原則です。SSコードは機関投資家に対するガイダンスではありますが、その委託先や関係者も含めた幅広なスチュワードシップを求めるようになってきたと言えるでしょう。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
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その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
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