Vol.125 菅内閣発足 (2020年10月15日)
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【ビズサプリ通信】
1. 菅内閣発足
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ビズサプリの花房です。9月16日に菅義偉総裁が新首相になり、菅内閣が発足してから1か月がたとうとしています。目下の課題は、新型コロナウィルスの拡大防止に向けた取り組みと、それによりダメージを受けた景気への迅速な対応と思いますが、長期的には、日本という国が活力を取り戻し、持続的な発展を維持するための改革が求められていると言えるでしょう。
通常は、首相就任後に行われる所信表明演説は、安部首相の辞任で急遽交代したこともありまだ行われていませんが、新内閣で河野太郎行政改革・規制改革相、平井卓也デジタル改革相の起用から分かることとして、行政改革・規制改革を推し進め、行政のデジタル化を推進することに本気になって取り組んで行く菅首相の強い意志が感じられます。
河野太郎行政改革・規制改革相は早速、行政手続きで極力ハンコを廃止することを求め、規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)を設けるなど、古くからの慣習を今の時代に即した形で変えていく動きが始まりました。
また平井卓也デジタル改革相は、行政のデジタル化を牽引する「デジタル庁」創設に向けて準備を始めましたが、今後行政手続きのオンライン化を中心に、普及が遅れているマイナンバーカードの普及と合わせて、一気通貫で迅速な行政手続きが出来るようになることが期待されます。
前政権において、株価を除きなかなか日本経済の成長が実感出来なかった中、今回の新型コロナや近年の自然災害の増加による閉塞感の中、明るい未来を描けるよう新首相には大いに期待したいと思います。
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2. 将来なくならない仕事
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以前から言われていることとして、文明が発達してもなくならない重要な仕事として、食・物流・医療、の3つがあります。食と医療は人が生きていくためになくてはならないものですし、どれだけITが発展して情報のやり取りはオンラインで出来るようになったとしても、最終的にモノのやり取りは物理的な移動を伴うからです。
ただし、その有り様はここにきて、環境の変化と技術の発達により、大きく変わろうとしています。特に日本においては、今後の労働人口の減少に対応して生産性の向上を図ることが課題です。
食については、農業・漁業といった一次産業を担っている方はかなり高齢化しており、若者でその世界に飛び込んでくる人がいるといっても、新規就業<リタイア数、の状況において、従来のやり方では生産量を維持出来ません。
より少ない生産者で従来以上の生産量を確保するためには、ITによるデータ活用やドローン・ロボット・自動操縦技術等を駆使して実際の農作業自体を人手がかからなくても出来るようにし、人はオペレーションルームのようなところでデータを分析して(それさえもAIが出来るようになるかもしれませんが)、遠隔で機械を動かすことが一次産業に従事する人の働き方になるかもしれません。またすでに市場に出てきていますが、人工肉のような、工業製品としての農産物・畜産品も当たり前になる時代が、何年先か分かりませんが、来るでしょう。
医療については、オンライン診療やオンライン処方が議論され、安全性を担保する仕組みが確立されれば、規制が緩和されていくでしょうし、また手術もロボットが行うような時代が来るかもしれません。
そして物流については、アマゾンをはじめとするEC取引の増大により、少量で高頻度の配達が増えていた上に、コロナにより、それが加速している状況です。物流現場で働く人にとっては決して楽な仕事でないため、こちらも働き手が不足している状況の中、解決策としてはやはりドローンやロボットを活用した自動配送技術ということになるでしょうか。
一方で、経理の仕事や会計士の仕事は、AIの発達により将来はなくなる仕事と言われています。ペーパーレス化や自動仕訳により、従来の証憑整理や伝票記帳の仕事は確かになくなり、監査業務も会計データが丸ごと電子化されれば、AIによる分析等でデジタル監査が進むと思われます。
確かに、技術の発展により、従来人手がかかっていた仕事がコンピュータやロボットといった機械に代替される部分はありますが、しかしながらそれは一面的な見方であって、経理や監査の仕事で言えば、そもそもの自動化の仕組みを作り上げたり、出来上がったものを分析して今後の経営に役立てるための仕事は、少なくとも近い将来においてはなくらないものと考えます。
将来もなくならないであろう仕事として、食・物流・医療、の3つを挙げましたが、これらも現場作業においては人から機械への代替は進んで行くのは確実であり、ただ生産そのものやサービス自体がなくならないだけであり、その意味においては、会計に関する仕事も同様と言えます。
技術の発展は、ツールの進化であり、それを使いこなすのはやはり人ですから、会計の世界においては、いわゆるルールベースの財務会計分野はどんどん自動化、機械化は進むと思いますが、それを活用して経営判断に役立てる管理会計分野においては、まだまだ人が介在することで、より良いものを作り上げていける分野だと思っています。
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3. デジタル化より重要なこと
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菅新政権が掲げるデジタル化の推進は、規制緩和と合わせて、我々の実生活をより便利にしてくれるものであることは間違いないと思います。またその過程では、新サービスが生み出され、世の中に普及することで、ビジネスの発展も期待されます。それが行政サービスの効率化や社会保障の充実に繋がり、一方で税収の増加になれば、日本の抱える大きな課題解決の処方箋の1つになりう
るでしょう。
一方で今回のコロナ騒動への対応でリモートワークが普及し、大手企業を除けば在宅勤務の割合は減りつつあるものの、従来に比べて物理的に働く場所の制約は減ってくると思われます。これを機に、通勤の頻度が減ったことで、住環境の良い郊外に引っ越す方も出てきていると聞きます。生活の糧が得られるのであれば、自然が多くより環境のいいところに住みたいというのは当然かもしれません。働く意味というのを、改めて考えさせられます。
戦後、日本は世界に類を見ない経済回復を遂げ、成長発展してきましたが、バブル経済の崩壊とともに、失われた20年とか30年と言われる、景気低迷から完全には抜け出せていない状況にあります。そこに今回の新型コロナにより経済活動が制限されていますから、新型コロナのワクチンや治療薬が世の中に出てきてインフルエンザ並みに収束するまでの間は、しばらくは閉塞感のある状況が続くのではないかと思います。
この20~30年の間に、世界の様々な国で経済が発展し、人口増、経済発展で食料や原材料と言った資源の獲得競争が加速し、工業化の発展で二酸化炭素の排出に歯止めがかからず、それが異常気象の遠因と言われています。そうすると、いつまでこの経済成長を前提とする従来の資本主義を貫くことが、本当に世界にとっていいことなのか、という議論も増えてきていると思います。
資本主義に代わる経済体制が発明されない限りは、世界の多くの国で資本主義体制での経済成長を続けていかなければなりませんが、資源の枯渇とともに、いつかは限界が来るのは間違いなく、それがいつかは誰にも分かりません。
デジタル化は、目の前の課題を解決するツールではありますが、政権に本当に考えてもらいたいのは、日本の継続性を確保するための、将来のグランドデザインです。そのために、縦割り行政の打破だけでなく、民間の智慧を大いに取り込んでもらいたいと思います。
ビズサプリグループでは、将来なくならない仕事としての、管理会計支援、それができる人材による常駐型アウトソースも行っておりますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
https://biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
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