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会計

Vol.128 中小企業の経理業務に求められること (2021年2月3日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.128━2021.2.3━

【ビズサプリ通信】

▼ 中小企業の経理業務に求められること

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ビズサプリの泉です。

1月上旬に緊急事態宣言が再び発令され、新型コロナ感染症が落ち着く目途はたっていないにも関わらず、4月の緊急事態宣言の時に比べて通勤電車の人も減らず、街中の人もさほど減っていないような感じがします。 自分のクライアントでも、積極的に在宅勤務を推進している会社と原則出社に戻った会社に分かれており、後者については4月の緊急事態宣言の期間は在宅勤務でしたが、今回は出社のままとなっています。

今回は、新型コロナ感染症の影響の色濃い2021年の税制改正のうち、経理の業務に関係が深そうな項目について考えてみたいと思います。

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■ 1.税制改正について

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2020年12月21日に税制改正の大綱が閣議決定されましたが、税制改正について具体的には次のように財務省のwebサイトで説明されています。

「毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて、「税制改正の大綱」が閣議に提出されます。そして、閣議決定された「税制改正の大綱」に沿って、国税の改正法案については財務省が、地方税の改正法案については総務省が作成し、国会に提出されます。」

2020年12月に閣議決定された税制改正の大綱における序文において、ポストコロナにむけた施策を行っていることが説明されています。具体的には、コロナ禍における雇用環境の悪化への対策としての新規雇用拡大、教育訓練支援の税制優遇や投資を促す繰越欠損金の控除上限の特例とならんで、納税環境整備についての項目がかなり見直されており、ここが注目すべき点ではないかと思っております。

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■ 2.納税環境整備について

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税制改正の大綱の概要では次の6つの項目が挙げられています。

・税務関係書類における押印義務の見直し

・電子帳簿等保存制度の見直し等

・地方税共通納税システムの対象税目の拡大

・個人住民税の特別徴収税額通知の電子化

・国際的徴収回避行為への対応

押印義務の話は、河野行政改革担当大臣が推し進めている行政手続の押印手続きの廃止の一環かと思われますが、かなり大胆なものとなっています。具体的には実印・印鑑証明を求めているものを除き、基本的に押印義務が廃止され、税務関係書類となる申告書や届出などほとんど押印が廃止されます。

さらに、改正の適用日は2021年4月1日以後に提出するものとなっているものの、運用上は施行日前においても許容されることが国税庁のwebサイトにおいても明らかにされています。(「税務署窓口における押印の取扱いについて」)あわせて、e-Taxによる申請において、e-Taxに様式等がないことで入力送信できないものについては、pdfのようなイメージデータによる送信することができるようになります。

地方税共通納税システムの対象税目の拡大には固定資産税がなどが含まれ、全国展開の小売業などには簡素化されると思われますし、特別徴収税額通知の電子化についても一度その業務を行ったことがある人にとっては、その大変さが理解ができるかと思います。その中でも、特に今回注目するべきは、電子帳簿等保存制度の見直しによる大幅な緩和であると個人的には思っています。

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■ 3.電子帳簿等保存制度はどう緩和されたのか?

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最近、テレビCMなどで経費精算についてワークフローを利用した大幅な効率化をうたっているものや、Webサイトの記事などでも領収書などの電子化によるペーパーレスを推進するような記事もよくみかけます。ただし、ペーパーレスを完全に行うには電子帳簿保存法を遵守する必要があるのですが、その要件は毎年緩和されつつあるものの、従来の要件はまだまだ厳しくコストがかかり実務的にはほとんど無理ではないかというような制度でした。

そもそも、電子帳簿保存法は、仕訳帳や決算書など自社で作成する国税関係帳簿・書類の保存の話と請求書や領収書といった取引先から受領する国税関係書類の電子化の話に大きく分けられます。ペーパーレス化は主に後者の話の場合が多いのですが、従来の要件は厳しく特に下記2つのハードルが実務的には高いと感じていました。

・立替経費の領収書の場合、本人の使用から3日以内にタイムタンプをつける、あるいは本人以外の例えば経理がタイムスタンプを行う場合は2カ月以内となるが原本照合が必要

・相互牽制、定期検査、社内規程整備といった適正事務要件を充足

そのため結局、使用者が領収書を紙に貼付し、経理が確認できるようにしたうえで、経理に申請書と一緒提出するフローがほぼ避けられない状況でした。

今回の税制改正において、この点が大幅に緩和され、次のようにほぼ解消されることとなりました。

・一定の経費システムであれば本人が2カ月以内にシステムに保存することでタイムスタンプも不要

・相互牽制といった適正事務要件が廃止

そのため、具体的には下記の従業員と経理部門のルーチン作業が大幅に減ることとなります。

(従業員)領収書をためて保存、申請書に貼付し、経理に提出

(経理部門)領収書と申請との照合、紙を保存

これらの作業がなくなることにより、領収書を紛失した従業員が提出したのに経理は受け取っていない、紙がどこにいったかわからない、といった紙での作業ゆえに発生している業務からも解放される可能性が高いといえます。

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■ 6.これからの経理業務について

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上記では経費精算の効率化の話をしましたが、電子帳簿等保存制度の対象は当然請求書も含まれています。並行して請求書の電子化の議論も活発であり、データ仕様の統一などにより2023年までに導入をめざすとの記事が2020年7月に日本経済新聞の記事にありました。

このコロナ禍の影響により一気に電子化が進むと、そろばんから電卓、電卓からシステムによる計算、紙伝票から会計システムなど大幅に変化してきた経理業務もさらに変化していくことが予想されます。環境が整備されることにより、これからの経理部門は情報提供部門としてより本質的な業務に注力していく必要が増していると感じています。

ビズサプリグループでは、最新の税制、システムなども勘案した業務改善コンサルティング業務も行っておりますので、何かお役に立てることが ありましたらご相談ください。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
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執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
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泉 光一郎

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