Vol.101 株式報酬制度の利用 (2019年8月21日)
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【ビズサプリ通信】
▼ 株式報酬制度の利用
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ビズサプリの泉です。当初、冷夏といわれていた今年の夏ですが、梅雨がなんとなく終わった途端、猛烈な暑さとなりました。その上、大型の台風による大雨もあり、冷夏であったり酷暑であったりと、ここ数年異常気象ばかりのイメージです。昔の小説やドラマにでてくるような、朝の公園でのラジオ体操や夏休みの日中から子供たちが遊ぶような光景はもう東京にはないのでしょうか。
経理部門の方たちは3月から続く年度決算、第1四半期決算がやっと終わり、第2四半期までの閑散期となり休暇をとっているのではないかと思います。今回は会社における株式報酬制度の位置づけを考えてみたいと思います。
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■ 1.報酬とは
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報酬とは、一般的には労働基準法における賃金がわかりやすいかと思います。 「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」(労働基準法第11条) つまり、労働したことの対価として受け取る金銭ということになります。役員報酬も従業員ではないですが、業務遂行の対価であることは同じといえます。
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■ 2.現金報酬と株式報酬について
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報酬は、基本的には現金でもらっていると思いますが、これは労働基準法上定められており、一般的に「通貨払いの原則」呼ばれています。(労働基準 法第24条)
では、なぜ、わざわざ株式報酬が利用されるのでしょうか。これは現金報酬 及び株式報酬の特徴に差があるためです。 具体的には次のような特徴があります。
現金報酬:
金額がわかりやすい、給料という感じがする
流動性が高く生活給に向いている
基本的にもらえない、価値が減るということがない
株式報酬:
会社に資金余力がなくても支給できる
将来の株価に対するものであるため、将来の成果に対するインセンティブとなる
設計の仕方によっては、金額の大きなハイリターンの可能性がある
株主となることで、全社意識、ロイヤリティの向上が図れる
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■ 3.株式報酬の種類
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では、実際に株式報酬にはどのような制度があるのでしょうか。一般的な株式報酬制度と呼ばれるものには下記のようなものがあります。また、株式を給付するといった意味で幅広く列挙してみました。
ストック・オプション(SO)
一番有名な株式報酬制度であり、株式を将来一定の条件で購入できる権利を給付するものであり、次の2つが代表的なものとなります。
税制適格ストック・オプション(税制適格SO)
利益について税務上有利になるものの、行使価格(株式購入価格)がSO付与時の 株価以上であるため、値上がりした分のみが利益となる。
1円ストック・オプション(1円SO)
1株1円で購入できるSOであり株価が現在よりも下がったとしても利益となるものの税務上は有利にならない。
リストリクテッド・ストック
一定の勤務期間後に譲渡制限が解除される株式を給付。
パフォーマンス・シェア
一定の業績条件達成後に現物出資して、株式を給付。
株式給付信託
会社が組成した信託を通じて株式を給付する。一定の条件(勤務期間や業績)に応じたポイントが付与され、条件達成後に給付
持株会
役員や従業員は給与から一部持株会へ拠出し、定期的に株を取得する。拠出時に従業員にはあらかじめ設定した奨励金を付加する。
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■ 4.利用の場面
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「1.報酬とは」で述べた通り、報酬は一般的には過去の勤務に対する対価の意味ですが、株式報酬はもっと広い目的のために様々な場面で利用することができます。
採用時
サインアップボーナスを現金で支給することはできますが、資金余力のないベンチャー企業では株式報酬で行うことがよくあります。
例)非上場会社の税制適格SO
業績へのインセンティブ設計
上場会社では株式に流動性があるため、株式報酬を渡すことにより将来の企業価値向上(株価向上)を目的として、将来の働きへの期待にインセンティブを付けることができます。 その際に、企業価値に大きく影響を与えることができるマネジメントに近い層にはハイリスク・ハイリターン、ミドルやメンバー層には一定の利益が確保される株式報酬が向いていると考えられます。
例)上場会社の税制適格SO、パフォーマンス・シェア、株式給付信託 リテンション
勤務条件を付けた株式報酬や株式保有による全社意識、ロイヤリティの向上を目的として株式報酬を付与することがあります。
例)リストリクテッド・ストック、株式給付信託、従業員持株会
退職時
マネジメント層には短期の企業価値の向上を追うのではなく、中長期視点で業務を行うようなインセンティブをつけるとともに、退職時に一定の報酬として付与することがあります。
例)退職時役員向け1円SO
このように株式報酬は様々あるとともにその特徴に応じた使い方もいろいろあります。また、今回は述べませんでしたが、各制度について、会社法上、会計上、税務上、金融商品取引法上などの取り扱いも異なっています。
ビズサプリグループでは、導入目的に応じた株式報酬制度に関するコンサルティング業務も行っておりますので、何かお役に立てることがありましたらご相談ください。 本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。