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Vol.43 新規上場会社数の減少の理由(わけ)(2016年12月21日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.043━2016.12.21

【ビズサプリ通信】

▼ 新規上場会社数の減少の理由(わけ)

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ビズサプリの久保です。

だいぶ日が短くなったと思ったら、21日は冬至です。冬空の星が最近きれいなのはご存知でしょうか。都会の夏は、ほとんど星座が見えませんが、冬になると空気が澄んできて星座が見えるようになります。その中でもオリオン座がどこからでもはっきり見えています。天体望遠鏡でなくても双眼鏡でも有名なM42(オリオン大星雲)がぼんやり見えるのはご存知でしょうか。 たまには夜空を見上げてみてください。

今回は、一年の締めくくりとして、今年の新規上場会社のお話をいたします。

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■ 1.新規上場会社数が減少

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日本取引所グループは、2016年の新規株式公開(IPO)企業数が前年より約1割少ない84社になると発表しました(12月1日付日経新聞)。2009年の13社を底にして、57社(2013年)、78社(2014年)、95社(2015年)と順調に新規上場会社数が増えてきましたが、ここにきて84社と減少することになってしまいました。減少するのは7年ぶりということになります。自動運転のZMP社が、情報漏洩のため12月での上場を延期したことから、東証が公表した84社からさらに1社減少しするのではないかと思います。(東証のウェブサイトには、執筆日現在12月の上場会社数は未だ公表されていません)

今年始めには、昨年は95社にまでになったことから、100社超えが期待されていたところですが、このように減少したのは、東証による新規上場の審査強化のためとされています。結果として、最近の上場ブームに水を差した感じになるのは否めません。

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■ 2.なぜ東証が審査強化?

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 2年ほど前から、上場直後に業績の下方修正を発表する会社が相次いでいました。東証では、そのようなことにならないよう、上場後の業績を確かめるような審査をしているものと思われます。これが新規上場会社数減少の大きな理由ではないかと思います。その筋のお話によると、マザーズの上場審査は2ヶ月(東証ウェブサイトより)とされていますが、それが半年以上掛かっている会社もあるとのことです。上場審査が長期間化していることは事実のようです。

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■ 3.再上場の審査も強化

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このほか別の観点から、上場審査が強化されていることが最近の報道で明らかになりました。それはMBO後の再上場の審査強化です。上記の記事の翌日の 12月2日付で日経新聞に「日本取引所、再上場企業の審査強化」という記事が 掲載されました。

投資ファンドが上場会社の株式の大部分を買い取って上場廃止し、その後その会社が再上場するという事例は、これまでもありました。例えば、スカイラークは、業績が悪化したことから2006年9月に上場廃止して野村プリンシパルファンアンス(NPF)などの傘下に入りました。その後業績が回復せず、2011年 秋にはベインキャピタルが買収し、2014年8月に再上場したのです。

このように業績が悪くなった上場会社にファンドが入って上場廃止するケースは雪国まいたけ(これもベインキャピタルが投資しました)など、数が増えてきました。ファンドとしては、将来EXIT(株式売却)して株式の売却益を得るために投資しているのですから、会社の売却か再上場を目指すことになります。そのためには業績回復が必須となります。

お金を出すだけでなく、経営に手を入れて業績回復させる努力をするわけですから、ファンドとしては、それなりの見返りがあって然るべきです。しかし、一般株主から見たら、業績が悪化して株価が下がった時に上場廃止され、再上場したら高い株価になっている、ということでは、株式を持ち続けて儲ける機会を失うということになってしまいます。当然ながら、非上場の期間は業績の開示もされません。

業績が悪くなったタイミングで、ファンドが経営者と組んで、意図を持って上場廃止して再上場で儲けるということだと、一般株主の利益を害することになってしまいます。このようなことがないかについて、東証はしっかり時間をかけて審査しますよ、ということだと考えられます。

本年も【ビズサプリ通信】お読みいただき、ありがとうございました。 良いお年をお過ごしください。

カテゴリー
会計
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不正
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その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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