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Vol.134 マスコミ報道に対する信頼度 (2021年5月19日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.134━2021.5.19━

【ビズサプリ通信】

▼ マスコミ報道に対する信頼度

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ビズサプリの辻です。

5月11日までの予定だった緊急事態宣言。感染は終息するどころか全国に広がりを見せ、緊急事態宣言は5月末まで延長、対象も4都道府県から9都道府県に拡がりました。まん延防止重点措置が適用される地域も10県となっています。

このようなコロナ関連のニュースを毎日のように耳にします。日々発表される感染者数、重症化した方の体験談、ワクチン予約の混乱や遅れなど「何かうまくいっていない」感じの報道にストレスを溜めている方も多いのではないでしょうか。その上「日本医師会長が政治資金パーティをしていた」「ワクチン予約の電話がパンクしてなかなか予約できない」といった報道を聞くと親しい友人とおいしい食事を共にすることさえできないイライラは爆発しそうです。そしてその「イライラ」を爆発させ、レジで暴れてみたり、電車内でもめ事があったという報道を聞くとさらに鬱々とします。

ただ、最近報道を見聞きしているとその伝え方があまりにも「不安を煽り過ぎではないか」「できていない事ばかりを強調していないか」と思うことが多くなってきました。皆さんもそう感じることはないでしょうか。

コロナ関連の報道だけではなく、企業不正や不祥事に対する報道についても「事実を冷静に伝える」というよりは、「犯人探しをして袋叩きにする」「面白おかしく”発言”を切り取って伝える」ということも多くなり、そのような報道には辟易とすることもあります。

一方で報道の持つ力は非常に強く、多くの企業で「マスコミに報道されるとレピュテーションリスクが大変だ」ということが不正・不祥事対策の1つの目的となっています。

マスコミに対してどうしてこのように神経をすり減らしてしまうのでしょうか。

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■ 1.各機関への信頼度

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世界100か国以上で各国の18歳以上の男女を千人単位でサンプリングして、個人を対象に価値観を聞く「世界価値観調査」という全世界レベルの調査があります。1981年から調査が行われています。国民性が数値として「見える化」されており、調査結果に基づいた日本人の特徴を電通総研と同志社大学が共同でレポートをしています。単に印象だけではなく調査結果から基づいた分析であり興味深いものとなっています。ご興味のある方はご覧ください。
(電通総研 2021年3月22日 第7回世界価値観調査レポート
https://institute.dentsu.com/articles/1706/)


その中の調査項目で、「組織・制度」への信頼感について調査をする項目があります。各国の国民がどのような組織や制度に対して信頼を置いているか、もしくは信頼していないかがわかるというものになります。

結果は、信頼度が高い順に

自衛隊(80%台)
警察・裁判所(70%台)
新聞・雑誌・テレビ(60%台)
大企業・行政・環境団体・国連(40%台)
政府・労働組合・国会(30%台)
政党(20%台)
宗教団体(10%未満)

となっています。
(出典:PRESIDENT Online 2021年2月23日)

皆さんの思う信頼度と比較していかがでしょうか。

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■ 2.マスコミに対する信頼度の傾向

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組織への信頼度の調査結果の日本の特徴として「マスコミ(新聞・雑誌・テレビ)」への信頼度が先進国の中で特に高く、マスコミが世論の形成に大きな影響力を持っているということがあるそうです。一方で政府に対する信頼度が低く、マスコミに対する信頼度を下回っています。

この傾向は欧米等の先進国の中では大変特徴的です。マスコミに対する信頼度が政府を下回るということはまれで、同等もしくは「政府の方が信頼できる」という結果が出ています。
但し、他の先進国で政府への信頼度が高いわけではなく、軒並み50%以下です。それにも増してマスコミに対する信頼度がとても低く、20%~30%となっています。イメージとしては、政府もマスコミも信頼ならないけれど、「政府の方がまだマシ」
と思いながら報道に触れているといったことになります。そういう背景もあって、「FACTFULLNESS」が世界中でベストセラーになるのでしょう。

一方、上述した通り日本のマスコミ(新聞・雑誌・テレビ)に対する信頼度は新聞雑誌に対しては69.5%、テレビに対しては、64.9%と大変高いものになっています。そして、情報源として「テレビを毎日見る」という回答が89.8%、「毎日新聞・雑誌を見る」という回答が57.5%と両方ともに世界1位です。(出典:第7回「世界価値観調査レポート 最大77か国比較から浮かび上がった日本の特徴 2021年3月電通総研・同志社大学)

つまり私たち日本人は、毎日テレビや新聞にかなり信頼を置きながらそこから発信される情報に触れ、政府や行政から発信される情報より信頼していることが特徴的という調査結果となっています。

これまで真摯な報道がされてきたという背景があるのかもしれません。※参考までに先進国の「政府」「行政」「マスコミ」にかかる信頼度は下記のように
なっています。

日本(政府30%台、行政40%台、マスコミ60%台)
米国(政府30%台、行政40%台、マスコミ20%台)
英国(政府20%台、行政50%台、マスコミ10%台)
ドイツ(政府30%台、行政50%台、マスコミ30%台)
フランス(政府30%台、行政50%台、マスコミ30%台)
イタリア(政府20%台、行政30%台、マスコミ30%台)
スウェーデン(政府50%台、行政60%台、マスコミ30%台)

(出典:PRESIDENT Online 2021年2月23日)
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■ 3.マスコミへの信頼度と幸福度との相関

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マスコミへの信頼度に関して興味深い調査結果があります。少し前の調査にはなりますが、内閣府が実施している「生活の質に関する調査」において、2013年にマスコミに対する信頼度と幸福度の関係が分析されています。ここでは、「マスコミへの信頼度が高いほど生活に対する満足度が薄い」ということが指摘されています。

マスコミの報道に対して圧倒的に高い信頼をもっているがゆえに、「情報の真偽を自分で判断する」「情報のエビデンスを自分で調査する」などいったん立ち止まって自分の力で考えるということが苦手なのかもしれません。

「テレビが言っていた」「新聞に書いてあった」「コメンテーターの〇〇先生が言っていた」ということがそのまま真実として捉えられがちなのはなんとなく実感している方も多いのではないでしょうか。

連日コロナに関する報道では、

「ルールを守れていない人たちの状況」
「コロナ対応ができていない状況」ばかりが多いです。それを見て、
「そんなにできていないのか」「そんなに危機なのか」と不安に翻弄される状況と
「まあ、報道はそう言っているけれど本当は少し違うのではないか」
「こういう見方もできるのではないか」と少し批判的に、冷静に捉える状況
では、確かに幸福度は後者の方が高そうな気がします。

先日小学六年生の娘がニュースを見ながら、

「小学生の7割がストレスを溜めているというけれど、周りの友達を見てもそんな状況には見えないんだけどな。小学生は、、って言っているけれど、私はそんな質問受けたことないしな。」
とか、

「感染者の数だったり、重症者の数とか、夜間の人口だったり、すごい少ない数のことでも”率”を使ったり、なんとか大変だというのを見せようとしているように見える」とも言っていました。

学校で割合や数を習ったばかりの小学生の純粋な目で見た方が、盲目的に信頼をしてしまっている大人より冷静なのかもしれません。

コロナについていえば、各都道府県からモニタリング会議資料など結構詳細な情報がネット上では公表されています。これを見るとまた異なるコロナ禍の状況も見えてくることがあります。「結構色々頑張っている」といったこともあり、そのように自分なりに分析し、解釈をしていく、それを自分の意見として発信したり議論したりするといったことが必要になるのでしょう。

ただ、さすがに最近の報道のされ方はコロナに限らず目を覆いたくなることも多く、マスコミの信頼度は次回の調査ではだいぶ下がる可能性はあるかもしれないですね。

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■ 4.情報を見せ、自律して考える組織へ

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「テレビが言っていた」「〇〇先生がいっていた」ということで自分自身の判断軸で考えない状況というのは不正・不祥事の調査報告書などでよく指摘されています。「上司の指示だったから仕方がなく」「前任者がやっていたから特に深い考えがなく」「すでに決まっていることだから何か口を出すべきことではないと思った」といったフレーズは記憶に新しいのではないではないでしょうか。

『情報の透明性がなく、物事の決定過程があいまいで、それでも「上が決めたことだから」「よくわからないから」と盲目的に従う』といった体質の組織で不正や不適切な行為が長期間淡々と繰り返されてしまいます。

従来型の終身雇用制で社長をトップに据えたがっちりとした三角形のヒエラルキーが前提の組織においては、「上」は特権階級であり、エゴやルール違反も「大目に見られる」ものであったと思います。例えば多額の金品を受領すること、ルールに
反してお店で接待を受けることも「えらい人」となった人が当然受けられる特権と捉えられていたかもしれません。

その特権階級で交わされる情報は当然「秘匿」情報であり、正式な会議やプロセスとは別のところで様々な決め事が行われてきたという背景もあったのでしょう。

「自律して考える組織」となるためには、まずは経営陣の特権階級意識からくる情報秘匿体質を変えていく必要があるのではないでしょうか。

カーネギーホールの総監督兼芸術監督である筆者の言葉をご紹介します。「多くのリーダーは、情報をパワーだと間違って考え、広いコミュニケーションを取ろうとしない。私の考えは逆だ。ただ、1つの最高の決定を下す方法は、全ての人が関わり、可能な情報を人々と共有することだ。機密性とは、絶対に機密でなければならないことだけであり、それは恐らく1%にも満たない。」(音楽と真のリーダーシップより抜粋)

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■ 5.おまけ

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「生活の質に関する調査」は内閣府が定期的に実施をしています。生活に対する満足度と様々な項目との相関関係を調査しています。年収や住居の広さ、学歴や働き方等多くの項目と生活の満足度の関係を可視化している調査でなかなか興味深いものです。

ちなみに、コロナ禍の影響も早速調査がされています。当たり前ですがコロナ前に比較すると全体的に生活に対する満足度は下がっていますが、増えた家時間の中夫の役割が増えたと回答している人の方が、コロナによる満足度の低下が少ない(つまりそれほど生活の満足度にダメージを受けていない)という結果が出ています。

私の周辺では特に専業主婦のママ友から、「夫が家で仕事をするようになって、1日家にいてもこんなにやることがたくさんあるんだ、ということを理解してくれるようになった」とプラスの意見が聞かれることが多かったです。コロナでも身近に小さな幸せはたくさんありそうです。

大変な状況とはいえ、ロックダウンをすることもなく感染者は他の先進国に比べれば圧倒的に少なく抑えている状況をもう少しポジティブに捉えて、自信を持ってもよいのではないかな、と思う次第です。

早くこの状況が終息を迎えますように。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

 

カテゴリー
会計
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IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
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