vol.221 監査役等と内部監査の連携2.0のすすめ
ビズサプリの久保です。
ニデックの第三者委員会による調査報告書が3月3日に公表されました。その中で創業経営者の永守氏が内部監査部門やそれとは別に動く特命監査部長を活用して、「負の遺産」(業績目標達成のために、資産の減損回避などが行われ、それが滞留することによって生じた資産)を調査させたことが詳細に記述されています。
内部監査や特命監査は永守氏には有効に利用されましたが、取締役会には報告されることはなく、結果として会計不正を温存することになりました。
今回のメルマガでは、コーポレート・ガバナンスの観点から、内部監査の組織上の位置づけや監査役等との関係がどうあるべきかについて、お話したいと思います。
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■ 1.存在感のない監査役等
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重大不祥事の責任は執行側にあるとしても、「監査役等は何をしていたのか」と、株主・投資家・社会から、その存在意義を問われることがあります。ニデックでも監査役等や社外取締役が機能していなかったことが指摘されています。
未然に重大不祥事を予防・発見・是正することにより、第三者調査委員会の設置など不要になるのがあるべき姿です。監査役等の役割は、重大不祥事に発展する前に、黄色信号を発見し是正させることです。
なお、ここでは監査役等は監査役(会)、監査等委員(会)、監査委員(会)の総称として使うことにします。
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■ 2.内部監査の品質向上に着目する
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一般に企業不祥事発覚後の調査報告書では、内部監査が機能していなかったという指摘が多いですが、ニデックの場合は、内部監査には優秀な人員が配置され、機能していたとしています。しかし、発見された会計不正の是正は一部に留まりました。
ニデックでは内部監査が永守氏だけのために働きました。日本では内部監査を社長直轄としている会社が多いですが、その体制でよいのか、ということが大きな問題です。
2024年1月に「内部監査を社長に任せて良いのか」というタイトルのメルマガを書きましたが、経営トップに内部監査を任せたため、最悪の結果を招いたのがニデックであったと言えます。
内部監査を執行側ではなく監督側に所属させるのがベストであり、英米の上場会社ではそれが一般的です。しかし、日本の監査役等は内部監査と「連携」することが常識となっており、監査役会型以外の機関設計においても、内部監査を執行側に置く実務が主流になっています。
そこで日本型の「連携」を維持しつつ、それを一歩進めた「連携2.0」の体制を筆者は提案しています。それは、監査役等が内部監査を直轄するのではなく、社長直轄の内部監査を残したままで、監査役等が内部監査の品質向上に注力する体制です。
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■ 3.「連携2.0」とは
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内部監査は、社内のどの部署とも利益相反関係がなく独立している必要があります。たとえば、経理部に内部監査を所属させると経理部長の意向が反映して、十分な会計監査を実施することができません。
このため、どの部署にも所属しない社長が内部監査を直轄するのがよいとされています。といっても社長はすべての部署のトップですので、利益相反がないとは言えません。社長が持つ内部監査に対する指揮権と人事権を制限することで、この問題に対応することが「連携2.0」の体制です。
「連携2.0」は、監査役等による次の3つの権限を社内規程に明記することにより実現できます。
(1)内部監査計画、内部監査規程等の監査役等による事前同意
(2)内部監査部門への監査役等による指示
(3)内部監査部門長の人事への監査役等の事前同意
(1)は内部監査のやり方であり、(3)は内部監査部門長の人事です。社長は、監査役等の同意がないとこれらを決定できないことになります。(2)は監査役等が必要に応じて内部監査に指示できるということです。監査役等が内部監査のやり方と人事について事前同意するとしても、指示ができないと内部監査を良くすることができません。
「連携2.0」は、監査役等が内部監査を指揮命令する体制ではなく、社長が指揮命令する体制を維持しつつ、監査役等はどちらかというと、高い品質の内部監査が実施されることを監視監督するという体制です。
この「連携2.0」はまだ少数ですが、一部の上場会社が実践しています。3つの要件のすべてに対応する上場会社が増えてくることを期待します。日本監査役協会の月刊監査役2026年2月号にこれに関する拙稿が掲載されていますので、ご興味のある方はご一読ください。
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バックナンバー:「vol.186 内部監査を社長に任せてよいのか」
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