メールマガジン

メールマガジン

その他

vol.198 東証上場会社数が減少に転ずる

ビズサプリの久保です。
今年は10月に入っても秋らしくない日が続きましたが、ようやく紅葉を楽しめる時期になり、世間では衆議院選挙、ワールドシリーズと気になるニュースが続きました。
今回は、年末が近いこともあり、今年の締めくくりとして東証の上場会社数について考えてみました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.東証上場会社数の動向

―――――――――――――――――――――――――――

東証の上場会社数は、大阪証券取引所との統合後の2013年末の3,400社から11年間一貫して増加し、2023年末には3,837社までになりました。
しかし、今年は、これが減少に転じる公算が高くなってきました。現時点(11月中旬までの予定社数を含む)では、2024年の新規上場会社数が75社である一方、上場廃止会社数は86社となっています。

2015年から2023年までの新規上場会社数は年平均95社程度でした。
一方、上場廃止会社数は2015年から2019年の平均は年55社であり、2020年から2023年の平均は年70社程度に増加しています。新規上場会社数は毎年マスコミ報道されますが、今年の上場廃止会社数が80社を超えるというのは、あまり知られていないと思います。

上場廃止は通常、業績の低迷によることが多いと思います。最近の事例では、温泉リゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産(2024年9月にTOB公表、2025年3月までに上場廃止見込み)やキャンプ用品のスノーピーク(2024年7月に上場廃止)などは、コロナ禍やその後の対応により業績が低迷した結果、上場廃止しています。

今年の上場廃止の中では、大正製薬、ローソン、日本KFCホールディングス、永谷園ホールディングスなどの知名度の高い会社が含まれています。これらの会社は業績低迷が上場廃止の要因ではないようです。

大正製薬や永谷園は、株価やアクティビストなどに煩わされることなく、中長期の視点で経営に取り組むためのMBO(マネジメントバイアウト)が上場廃止の理由と考えられます。

一方、ローソンと日本KFCホールディングスは、どちらも三菱商事の出資先です。上場廃止によりローソンは三菱商事の子会社から持分法適用会社となり、日本KFCホールディングスは全株売却となります。両社についてはいろいろと報道はありますが、そもそもは三菱商事の経営方針によるものと考えてよいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.上場廃止ラッシュが来る!?

―――――――――――――――――――――――――――

プライム、スタンダード、グロースへの市場再編により、上場維持基準を満たしていない会社には経過措置が適用されていました。この経過措置が2025年3月以降に順次終了します。経過措置が終了した後も基準を満たしていない場合は1年間の改善期間があり、その後、監理・整理銘柄に指定され上場廃止となります。

上場維持基準に適合しないため経過措置が適用された会社が2024年5月時点で345社あります。
このうち、209社が2022年4月の市場区分の見直し時に経過措置の適用になっている会社であり、これにその後上場維持基準未達となった136社が追加されています。その内訳は、プライム 104社、スタンダード 190社、グロース 51社です。

市場区分の見直しが実施された時から、すでに2年半経過しています。残された期間はあと1年半しかないため、その多くが2026年3月末以降に上場廃止になると予想されます。

プライム上場会社は、それより上場維持基準が低いスタンダードやグロースに再上場することができるかもしれません。
しかし、スタンダードまたはグロース上場会社は、上場廃止を選ぶしかない会社もあるでしょう。また、経過措置終了期限までに、MBOやTOBによって自ら上場廃止の道を選ぶ会社もあると思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.上場会社は量より質の時代へ

―――――――――――――――――――――――――――

東証は、上場会社数が減少する事態を想定しており、「上場維持コストが増加し、非公開化という経営判断が増加することも想定されるが、そうした判断も尊重(東証として上場企業数に重点は置かない)」としています。これは、上場会社が「量より質」の時代になることを示唆しています。

東証が、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの会社に対してその改善を求めているのは、「質」を追求する方針の一つです。PBRは、株価を1株あたりの純資産で割って算出されます。これが1倍未満ということは、会社の時価総額が帳簿価額より低いということを意味します。

PBRが1倍割れの会社は結構多く、プライム企業の約4割、スタンダード企業の約6割とされています。

PBRが1倍割れ会社の中には、業績が振るわず市場から見放された会社が含まれます。
この中には、以前このメルマガでご紹介したようにGC注記(継続企業の前提に関する注記)を何年か続けて記載している会社もあります。事業構造改革の余地があるものの株価が割安な会社は、アクティビストのターゲットになりやすいとも言えます。
これらの会社は上場維持することの意味やメリットをもう一度考え直すことも必要になるでしょう。

本日もAW-Biz通信をお読みいただきありがとうございます。
ビズサプリでは、上場準備に当たっての内部統制整備や常勤監査役等のご紹介、TOBやMBOを含むM&Aに関わるご相談をお受けしております。
お気軽にご連絡いただきますようお願いいたします。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

過去の記事

Bizsuppli通信

会計のプロフェッショナルが、財務・経営を考える上でのヒントとなる情報を定期的にメールマガジンにてお届けしています

購読お申し込みはこちら