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Vol.91 経費精算は合理化できる (2019年2月20日)

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【ビズサプリ通信】

▼ 経費精算は合理化できる

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ビズサプリの泉です。 2019年最初のメルマガとなります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

私自身の業務は一般的な会計士、税理士の業務をやりつつも、経理関連のサポート 業務が多く行っています。今回はみなさんも知っているようで、あまり知らない、経費精算業務について 取り上げたいと思います。

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■ 1.経費精算とは

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経費精算とは、従業員が業務に必要な経費を立替えて払い、事後に精算を行うことであり、具体的な例は、取引先への交通費、出張の際の宿泊費、文具や切手などの必要な消耗品の購入、取引先との会食のための交際費などが思い当たるかと思います。

小規模な会社だと経費精算業務を紙で行っていることが多いのですが、大体50人 以上くらいの会社では何らかの経費精算システムが導入されています。その場合の実際の経費精算の一般的な流れは次のとおりです。

申請者:

1.領収書などを受領、保管

2.経費精算システムに金額、使用用途などを入力

3.領収書原本を台紙などに貼り付け

4.期限までに領収書原本を承認者に提出

承認者:

5.領収書原本と申請内容の精算金額等内容の一致を確認

6.精算の可否を判断(主に業務との関連性)

7.領収書原本を経理に提出

経理部門:

8.領収書原本と経費精算システムの金額等の一致を確認

9.精算してよいか内容の妥当性精査(主に社内ルールとの整合性)

10.科目、課税区分など会計項目の確認

11.会計システムに取り込み

12.振込み

13.領収書原本等を保管

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■ 2.よく課題となること

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経費精算業務そのものは、直接売上や利益に結びつかない付随的業務であるものの、申請者にとって直接自分の支出となるためやらざるをえず、また、経理部門にとっても量が多いが間違えられない業務となります。具体的に、実際の現場において課題となるのは次のようなことです。

申請者にとっては、

1.通常、立替の都度でなく、1月分などためてから締め日付近でまとめて申請することが多く、領収書等を紛失する。

2.システムの使い勝手が悪いと、金額等のシステムへの入力が手間となり時間が かかる

3.領収書の台紙等への貼り付けが手間となる

承認者:5.領収書原本の確認のためには、リモートで承認できない

経理:8.領収書の原本と申請金額の一致を確かめるのに時間がかかる

13.大量の領収書の保管が必要

特に申請者にとって、通常の業務が忙しい中、月1度領収書を財布から集め、経費精算システムへ入力していくという業務はかなり負担が重く、実際、自分がサラリ ーマンであったときは毎月憂鬱でした。

経理部門の経費精算担当にとって、本来は、項目10の会計項目の確認に注力すべきところ、業務の大半をしめる業務は項目8(領収書原本との確認)の大量の領収書とシステム上の申請金額、内容の照合となります。

また、そもそも経費精算業務は、相手が社内でかつ広範囲に広がるため苦情も多く、経理部員が精神的に疲弊しやすい業務といえます。よくある苦情の例として、次のことがあります。

・自分は忙しいor偉いので特別扱いしてほしい

  精算期限を超えても精算すべき

  領収書だけ渡すので台紙の印刷や貼付などの作業は時給の安い経理がすべき

  交際費について社内ルールで禁止されているお店での利用も認めるべき

  申請がない(遅れている)場合は個別に連絡してくれ

・自分はお金がないのですぐに精算してほしい

・自分は申請をしたはずなので、領収書原本がないのは紛失した経理の責任

・上司が忙しいので、精算の承認をしてくれない

この辺りは、会社によって対応は違うものの、経理部門における経費精算担当者は、非正規社員であることも多く、担当者が安定しない理由の1つでもあると思います。

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■ 3.最近の流れ

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経費精算業務は、コア業務ではないとして10年くらい前からアウトソースが流行っていますが、最近では、クラウドシステム及びスマートフォンの普及、画像認識、自動仕訳機能の高度化、オペレータ入力サービスなどにより、経費精算システムも実はかなり進化してきています。

例えば、項目1の領収書の紛失、項目2の経費精算システムへの入力の煩雑さの課題に関しては、申請者はスマートフォンで領収書の写真をとれば、画像認識やオペレータ入力により自動的に経費精算システムに金額や日付が入力、過去の入力から使用用途も自動提案され、入力作業はほぼなくなります。領収書のない電車やバスなどはSuicaやPASMOの履歴から自動でされます。

また、項目5のリモートでの承認の課題に関しても、領収書等は画像で添付されるため、クラウドシステム通じて、承認者はリモートで承認することができます。 ただし、この場合でも領収書の紙の原本が必要であり項目3の領収書の台紙への貼り付け、項目8の領収書原本と申請金額の照合、項目13の領収書原本の保管の課題はまだまだ残ります。

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■ 4.電子帳簿保存法

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この領収書原本紙問題については、電子帳簿保存法を利用し、紙ではなくデータを原本とし紙を廃棄するということが考えられます。ただし、従来は、例えば、電子化することについて金額基準があったり、画像化できるのは決められたスキャナでなければならず、スマートフォンは利用できない。また、本人が画像化する場合は領収書受領してから3日以内など、要件が厳しく実質的に運用がかなり難しいものでした。

要件は年々緩和されており、直近の通達において、ついに本人が画像化する場合でも他部署が全件原本とシステムの金額の照合することを前提にして、37日まで期間が延長され画像を原本化することが可能となりました。 他部署が全件照合をするとなると、結局、従来と同じ紙による申請が必要となってしまうのですが、画像認識をうまく使うなど照合方法自体を工夫することにより省略できるのではないかと思っています。

そうすれば、次の通り、経費精算業務はぐっと省略化されます。

申請者:2.経費精算システムに入力(スマートフォンで撮るだけ)し、領収書は回収ボックスにいれる

承認者:5.領収書の画像と申請内容と精算金額の一致を確認(リモートでできる)

6.精算の可否を判断

経理部門:9.精算してよいか内容の妥当性精査

10.科目、課税区分など会計項目の確認

11.会計システムに取り込み

12.振込み

システムor外部サービス: 画像認識等で画像と紙の領収書を一括照合経費精算については、まだまだ効率化の余地あるところであり影響も大きいところです。一度、やり方を見直すこともいいのではないでしょうか。

ビズサプリグループでは、経理業務の改善などのコンサルティング業務も行っておりますので、何かありましたらご相談ください。本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
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執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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