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会計

Vol.86 管理会計のありかた (2018年12月5日)

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【ビズサプリ通信】

▼ 管理会計のありかた

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ビズサプリの泉です。 2018年も12月となり、師走の忙しさを感じるとともに、気温もぐっと下がったと実感している近頃です。

経理部門における役割は開示制度が大きく変わってきたここ十数年は財務会計が重視されていましたが、それが一段落して管理会計にも一定の役割を果たすことが求められているという流れがあるようです。 最近、クライアントとの業務をしていく上も、また経理業界の雑誌においても管理会計が再び注目を集めているように感じており、今回は管理会計の在り方について取り上げたいと思います。

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■ 1.管理会計とは

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株主、投資家、国、銀行といった会社を取り巻く利害関係者に対して、制度に基づいて報告される財務会計とは異なり、管理会計とは、英語ではManagement Accountigとされるように、経営をするための会計であり、その目的は経営者や管理者が意思決定をするための羅針盤となる会計情報を提供することです。具体的には、事業への社内リソースの配分や事業からの撤退を検討するための事業の業績評価を適切に行うためであったり、より適切なインセンティブを付与する人事評価の指標とするために利用されます。

管理会計の代表的な業務としてよくいわれるのが原価計算や予算管理です。 原価計算は、個々の製品についてコストがどのようにかかっているかを明らかにし、販売価格をいくらにすべきかについて有用な情報を提供するとともに、製品の原価の内訳を明確化することでコスト削減をする際に役立ちます。予算管理は、予算と実績を比較することで過去の実績の分析を行い、将来の実績見込みの精緻化を図ることが主な目的となります。

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■ 2.原価計算や予算管理が管理会計なのか

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もちろん、原価計算によりコスト構造を明確化するとともに、予算管理により業績評価を行うことで予算達成を目指すということは、会社の目的である利益の最大化という点で有用ですが、原価計算と予算管理だけが管理会計ではないと考えます。

原価計算によるコスト構造の明確化については、販売価格をコストに利益を上乗せする方法で決めることよりも市場における価値、需要によって決まるということが増えてきています。また、個々の商品で黒字を確保する必要もなく、例えば、シェアをとるために赤字であっても戦略的に低価格で販売する場合もあります。このような場合、原価計算は販売価格のための意思決定に役立っているとはいえません。特に製造業以外においては、原価計算におけるコスト管理はあまり効果がなく、単なるコストを集計するだけになっている場合も多いといえます。

予算管理についても、精緻な着地見込みをつくることで、例えば投資計画や資金繰りに一定の情報をえることはできますが、「将来に向けての社内リソースの配分」については直接的に有効とはいえないのではないかと思います。

個人的には管理会計といえば、まずは費用を変動費、固定費と分解し、限界利益を明確にすることだと思います。 固定費は直接費なのか、配賦される間接費なのかを区分することになります。 従来は変動費で配賦される間接費というのは考えにくいものでしたが、最近 のAWSのようなサービスの登場で配賦する会社もでてきました。

事業のリソース配分の決定においては、限界利益を最大化するようにしますし、 事業撤退の判断には、単に商品や部門別の利益が赤字ではなく、間接費の回収 ができているかを検討したうえで決定しなければ、判断を誤り赤字が大きくなる可能性もあります。 ただ、会計情報は一般的には財務会計のルールに基づき作成されるため、集計 単位が勘定科目毎になっており「変動費」、「固定費」といった観点で区別 して集計ができるようになっていることは実務上は少ない印象です。

 

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■ 3.配賦計算は果たして必要なのか

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最近、いくつかの会社のコンサルティング業務をしているときに、配賦計算をどの程度すべきかということで議論になることがありました。配賦計算のメリット、デメリットは次の通りかと思います。

<メリット>

・各事業、部門にコストを負担させることができる

・コストを負担させたうえで、各事業部、部門に求める利益の額が明確化できる

<デメリット>

・配賦計算の手間、煩雑さがふえる

・基準をどこまで精緻にしたところで恣意性がはいる

・実際発生額を配賦する場合は、間接費の発生部門等でコスト意識が低下し非効率性が発生する恐れがある

原価計算基準やセグメント会計基準、固定資産の減損会計等の財務会計において、間接費の配賦は一般的な考え方です。また、従来の経理業務のおいては集計を精緻に正確に行うことが重要視されてきたために、財務会計をしてきた経理部員の中には配賦計算をすることについて強いこだわりをもっている人も多いと思います。ただ、管理会計において、有用なのでしょうか?

もちろん、全社でかかっているコストを各事業に配賦することで上記のとおり稼ぐべき利益の額が明確化はされるものの、デメリットのほうが大きい気がします。配賦のデメリットである煩雑さは経理部に負担をかけるとともに、現場の各事業担当者にとっては、通常管理不能費であるとともに、多段階配賦をした場合コストの中身が見えづらくなる問題のほうがはるかに大きいと考えます。

特に配賦額について、発生した科目と同じ科目で振り替えている会社が多いですが、その場合、同じ科目内に直接費と間接費が混在し、コスト構造が見えづらくなり管理ができなくなります。もはや、本来コスト管理を精緻にしようとしたにも関わらず、間接費がどれくらい発生しているかすらよくわからなくなっている場合も見られます。「とりあえず、何でも配賦」とするのではなくて、一度、立ち止まってその配賦 計算は管理上必要があるのか考えてみるべきではないでしょうか。もし、財務 会計上必要であれば、組替えで対応をすれば済むことになります。

ビズサプリグループでは、決算や法定開示書類の作成といった財務会計のコンサルティング業務のみならず、各業種における管理会計の見直しや、システム更新の際の要件定義のサポートも行っておりますので、何かありましたらご相談 ください。本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
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執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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