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Vol.20 株式上場時の主要課題 (2016年1月25日)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.020━2016.01.25━

【ビズサプリ通信】

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こんにちは、ビズサプリの庄村です。

今週は東京でも雪が降り、都心でも積雪6センチとなりました。交通機関のダイヤが大幅に乱れ通勤に大変ご苦労された方も多かったと思います。

今回のビズサプリ通信では、株式上場時の主要課題をテーマにしたいと思います。新規公開を試みる会社の多くで課題となる事項を説明していきます。お時間のある方はお目通しいただけると幸いです。なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。

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■ 1.2015年度のIPO実績

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2015年度の新規上場(IPO)は98社で、前年よりも18社増加しました。引き続き市況が堅調で、上場しやすい環境が継続していることが要因として挙げられます。

業界別ではサービス業が26社で最多となり、前年トップだった情報・通信業を上回りました。情報・通信業は25社で業界別では2位という結果になりました。

市場別では、マザーズが61社で全体の6割を占め、前年よりも17社増加しました(次いで、JASDAQ11社、東証二部9社)。郵政グループ3社などの大型案件がありましたが、直接東証一部に上場した会社は8社となり、前年よりも2社減少しています。ツバキ・ナガシマ、ベルシステム24ホールディングスはIFRSを適用して新規上場しました。IFRSを適用してのIPOは、すかいらーく、テクノプロ・ホールディングに続き、合計4社となりました。2016年も2015年に引き続き市況が堅調でIPO件数が増加するのを期待しています。

以下では、株式上場時の主要課題のうち、「経営管理体制の整備・運用」、「決算体制体制の整備・運用」及び「内部統制報告書制度への対応」 について述べていきたいと思います。

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■ 2.経営管理体制の整備・運用

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経営管理体制の整備・運用では、機関設計の見直し、規程類の整備や内部監査体制の整備が課題事項となります。

上場会社では非上場会社と比較してより高度なガバナンスを実施することが要求されます。特に東証一部、二部へ上場する会社はコーポレートガバナンス・コードの適用 で社外取締役を最低2名以上置くことが必要となります。そのため、従来の監査役会設置会社では、社外監査役2名に加えて社外取締役を2名置くと、最低4名の社外役員が必要となります。社外役員を4名設置するのが困難な会社は、社外役員が2名でよい監査等委員会設置会社も選択肢となります。

規程類の整備に関しては、証券会社の予備調査でほとんどの会社が指摘されているようです。多くの会社では、世間に出回っているひな形をベースに作成し、会社の実態に合っていないことが見受けられます。上場審査査で規程通りに運用していることが確認されますので、実行可能なベースでに合わせることが必要です。

内部監査部門は客観的な監査を実施するため、被監査部門からの独立性が必要となりますので代表取締役社長等の経営者直属とすることが望ましいといえます。ただし、多くの上場準備会社では内部監査部門が備わっていないことが多く、 株式上場に向けて内部監査部門を整備していくことになります。上場審査では1年以上の内部監査の運用実績が求められますので、直前々期の終了までには内部監査担当者の選任、内部監査規程類の整備、内部監査計画の立案等を実施する必要があります。

上記以外にも、リスク管理体制、反社会的勢力排除の管理体制、インサイダー取引防止の体制等の内部管理体制の構築も求められます。

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■ 3.決算体制の整備・運用

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非上場会社では税務基準で会計処理している場合が多いですが、上場会社は会社法や金融商品取引法などに従って会計処理することが求められます。また、非上場会社と比較して厳格な会計処理が求められます。上場申請にあたっては、企業会計の諸基準を十分理解し、それらの基準に準拠して開示書類を作成することが課題となります。

会社法や金融商品取引法などの厳格な会計処理をするためには、必要なデータを取るために販売や購買等業務の見直しが必要になってくることがあります。 特にIFRSを適用する上場準備会社では、この見直しを迫られることが多いと思います。

子会社を有する上場準備会社は連結財務諸表を作成することが必要となります。子会社にも親会社(上場準備会社)と同様の金融商品取引法などで要求される厳格な会計処理を行うよう親会社の指導が必要になります。また、子会社から開示情報のデータを網羅的に入手するよう連結パッケージの設計が必要となってきます。

上記以外にも、月次決算の精緻化、四半期決算の実施、原価計算制度の構築 、不適切な関連当事者取引の解消や関連当事者取引データ収集の仕組みの確立が必要になってきます。

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■ 4.内部統制報告書制度への対応

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内部統制報告書制度とは、経営者が財務報告に係る内部統制の有効性について評価し、経営者の評価結果について公認会計士又は監査法人が監査する制度です。すなわち、まずは経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価して内部統制報告書を提出し、それを受けて公認会計士又は監査法人が監査し内部統制監 査報告書を作成するものです。

一部の新規上場会社(資本金が100億円以上又は負債総額1,000億円以上の会社)を除き、上場後3年間は内部統制監査が免除されます。ただし、経営者評価が免除されるものではないため、経営者による内部統制報 告書の作成・提出は必要です。

内部統制報告制度に対応するには、財務報告に係る内部統制の基本方針の策定、評価対象範囲の決定、全社的な内部統制の文書化及び評価、業務プロセスの文書化及び評価、内部統制の有効性の評価が必要となってきます。特に業務プロセスの文書化・評価には多くの時間が必要になってきますので、なるべく早い段階から着手することが望まれます。当然ですが、内部統制報告制度への対応状況も上場審査の対象となってきます。

なお、ビズサプリではIPOのための資料作成やアドバイス業務の他、決算早期 化や決算精度向上などの業務改善、内部統制の構築・運用支援等、幅広くコン サルティングを手掛けています。お気軽にご連絡下さい。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

カテゴリー
会計
内部統制
ガバナンス
不正
IT
その他
執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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