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Vol.119 新型コロナ禍における監査役や内部監査の監査 (2020年9月2日)

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【ビズサプリ通信】

▼ 新型コロナ禍における監査役監査と内部監査

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ビズサプリの久保です。日本の新型コロナ感染症の新規感染者数はやや減少傾向になってきました。秋から冬にかけて、また感染拡大するという予想が見事に外れることを祈っています。ロックダウンを行わなかったスウェーデンでは感染者が一時増加したものの、現在はかなり減少しています。ロックダウンしなかった結果、経済のマイナス影響も最小限に抑え込めているようです。結局、何もしないのが正解だったのかもしれませんが、ファイナルアンサーは、来年以降に分かると思います。今回は、この新型コロナ禍における監査役や内部監査の監査について考えてみたいと思います。

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■ 1.厳しい監査環境

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リーマンショック後における我が国のGDPの下落は、17.8%(2009年1~3月期)でした。一方、今年4~6月期のGDPはそれを大幅に上回るマイナス27.8%でした。世界銀行による「世界経済見通し(GEP)2020年6月版」では、2020年の世界経済成長率は5.2%減になるとの予測となりました。これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退とされています。 リーマンショックは、100年の一度の危機と言われましたが、それを上回る状況になりつつあることを認識しなければなりません。 感染症拡大予防の観点から人々の行動変容が求められ、これにより事業活動に大きな影響を与えています。その中で、テレワークが奨励されていますが、これは監査役や内部監査も例外ではありません。国内出張は最小限に制限され、海外への渡航は難しい状況です。特に、感染した際に重症化しやすい高齢の監査役は、本社の執務室または自宅からのテレワークを中心とした仕事にならざるをえないと考えられます。監査環境に制約がある一方、監査上の問題はむしろ増加傾向にあります。日本公認会計士協会は「上場会社等における会計不正の動向(2020 年版)」において、2020年3月期の会計不正は前年から7割増加したと公表しています。また、コロナ禍においては、事業環境が大きく変化するため、それに伴う事業リスクやコンプライアンスリスクなどを考慮することが必要となります。テレワークによる情報漏洩リスクも気になるところです。

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■ 2.監査手続の制約とその対策

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コロナ禍においては、移動制限や立ち入り制限などのために、事業拠点や子会社への往査が制限されます。現地・現場への往査ができない場合は、代替手続を実施することになります。契約書等の紙媒体の文書はPDFファイル等に変換することにより、パソコン経由で見ることができます。紙媒体の文書を電子媒体に変換する作業は、被監査部門に依頼するか、または国内であれば、少人数の監査補助者等が現場に出向いて、変換作業を行うことも考えられます。契約書などの監査上重要と考えられる文書に関しては、まずは電子媒体を閲覧するとしても、後日原本との照合を行うことも必要です。これは、少人数の監査補助者等が現場に出向き、短い時間に複数の重要文書一度にまとめて照合すれば効率化できます。電子署名が一般化するまでは紙媒体での原本保管はするとしても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の見地からは、電子媒体での保管・閲覧する仕組みの導入も必要と思います。報告を受ける、説明を求める、質問を行うなどの監査手続は、オンライン会議システムを利用した面談により実施することができます。オンライン面談を利用すると移動時間が不要になり、国内だけでなく海外における事業拠点の役員・従業員とも面談できるというメリットがあります。 工場や事業拠点でスマートホン等を利用することにより、オンラインによる現場視察の実施も可能です。本社や自宅に居ながらにして、在庫の状況、工場設備、事故現場の様子などを見て報告を受け、質問をすることも可能になると思います。 前述のとおり、現場担当者がスマートホン等を操作するのではなく、少人数の監査補助者等が現場に出向いて、現場から実況中継する方法も考えられます。オンライン会議には、実際に会って話をしないと実感がわかない、顔色が読めない、雑談がしづらいなどの欠点があります。しかし、一方でその効用が大きいことから、コロナ禍が過ぎ去った後にも継続して利用すべき監査手法ということが言えます。

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■ 3.事業環境の変化と監査上の対応

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コロナ禍においては、多くの業種で事業環境が大きく変わります。業績が悪化する会社では、利益の過大計上を行う粉飾決算のリスクや、業務の混乱時に乗じた不正行為などが想定されます。業績不振への対策としてM&Aや新規事業への進出が行われる場合には、これらに関連するリスクも考慮する必要があります。コロナ禍においては、監査手続の制約は避けられません。これまでとは異なる代替手続を実施する場合もありますが、その十分性に留意が必要となります。コロナ禍において、多くの企業に共通する情報漏洩リスク、コンプライアンスリスク、財務リスクとそれらに対する監査上の対応について、ここで少し検討してみましょう。
(1) テレワークの導入による情報漏洩リスク
テレワークには、インターネット回線を専用回線化するVPN(仮想私設網)の利用が欠かせません。しかし、VPNのパスワードが流出しているという報道がありました(日経新聞2020年8月24日「テレワーク、VPN暗証番号流出 国内38社に不正接続」)。昨年9月にもVPN機器にセキュリティ上の脆弱性が発見されたとの報道がありました。脆弱性を抱えたままインターネット上で運用されているVPNサーバーが世界で1万4500台あり、そのうち1511台が日本国内にあるとしています(日経XTech 2020年4月22日「パッチを当てても駄目、テレワークのVPNに潜む致命的な脆弱性の恐怖」)。サイバーセキュリティに関しては、高度な専門知識と経験が必要になるため、外部専門家による診断を受けることが必要です。情報漏洩事故を起こすと多くの時間と費用を費やすことになります。予防のためのコストは、それに比べてかなり安いと考えてよいと思います。外部専門家の診断や助言を受けているかどうか、またそれに対してどのように対応したかが、監査上の留意事項になります。
(2) 資金繰り対策
 資金不足に陥る会社は資金調達が最重要課題となります。このような場合には事業継続に懸念が生じ、財務諸表には継続企業の前提に関する注記の記載が必要になる可能性があります。 継続企業の前提に関する注記を記載している上場企業は現状57社ですが、そのうち今年1月以降に新たに注記を付した会社は、その半数近い23社に上っています(SBI証券「継続企業注記銘柄」8月27日現在)。リーマンショック後にはこれが急増し100社を超えていたことから、今後この注記を付す会社が増加するものと見られます。 業績が悪化する会社においては、資金繰り計画に留意し、会計監査人と早めに協議することが必要となります。
(3)コロナ感染対策  感染予防対策だけでなく、役員・社員・顧客などの感染発覚時の対応についての計画立案が必要です。感染が発覚した場合に、隔離や営業停止などによる事業インパクトが大きいと予想される事業領域には、感染予防対策を強化することが必要になります。 監査においては、自社の事業領域や事業拠点ごとに、予防対策と発覚時対応の両方が適切であるかどうかに留意することが必要です。
(4)労務リスク
テレワークによる勤務状況の監督や、業績不振に伴う給与カット、希望退職の募集などに伴う労務リスクも考えられます。この分野も監査の重点領域になるでしょう。

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■ 4.事業リスクの再評価とリスクアプローチの徹底

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 事業環境の大きな変化に伴い、以上のような新たなリスクが想定されます。監査役監査や内部監査においては、コロナ禍の影響を十分考慮し、事業リスク全体の再評価を行うことがまず必要です。その結果を監査計画に反映しましょう。効率的かつ効果的な監査を実施するためには、徹底したリスクアプローチの採用が欠かせません。
ビズサプリグループでは、事業リスク評価や内部監査のお手伝いを実施しています。お気軽にお声がけください。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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カテゴリー
会計
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執筆者
辻 さちえ
三木 孝則
庄村 裕​
花房 幸範​
久保 惠一​​
泉 光一郎

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