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Vol.108 ガバナンス体制について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.112━2020.3.12 ━

【ビズサプリ通信】

▼ 社外取締役は「実効性」重視で選任しているか

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ビズサプリの久保です。新型コロナウイルス騒ぎで、世界の株価が急落する
という事態に発展しています。東京オリンピックが無事開催できるかについて
も心配になってきました。今回は、大揺れに揺れている、かんぽ生命のガバナ
ンス体制について考えてみました。

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■ 1.意外に多い社外取締役過半数の会社

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日本取締役協会2019年の調査によれば、東証1部上場会社のうち、社外取締役
を取締役会の過半数としている会社が142社あるとしています。2014年では
51社でしたので、5年で約3倍になったということになります。
増えてきているといっても、このような会社は東証1部上場会社の1割に満も
たない少数派です。CEOとCFO以外は社外取締役が普通の米国の状況に比較する
と、大きな違いがあります。日本の上場会社では、今のところ、2,3人の
社外取締役を置くのが主流と言えます。
 最近、「社外取締役過半数に」という要求をアクティビストファンドが
上場会社に突きつけるケースが増えてきました。また、過去に不祥事を起こ
した会社が社外取締役過半数にしています。日産自動車東芝スルガ銀行
オリンパスなどがその例です。社外取締役過半数にすることは、いわば先進
的なガバナンス体制を採用していることの象徴になっています。

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■ 2.かんぽ生命の不正募集問題

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 かんぽ生命は、保険の不正募集問題で大きく揺れています。金融庁から3月
31日までの3か月間の業務停止処分を受けました。調査の結果分かった不適正
募集は、社内ルール違反1608件、法令違反153件(ともに2月19日時点)でした。
特別調査委員会は3月末まで追加調査を続けるため、違反件数は増加するもの
とみられます。
その特別調査委員会による調査報告書(2019年12月18日)によれば、この不
適正募集を職場で見聞きしたことがある郵便局員が半数程度いました。2人
に1人は知っていたということになります。
これほど現場で知られている問題について、役員に対しては「大きな問題で
はない、すでに解決策を取っている」と報告されていたと調査報告書に記載
されています。
 日本郵便では全国に約1000名、かんぽ生命には80名から90名の内部監査要
員がいますが、「事務上の不備等の有無を確認する準拠性監査にとどまって
おり」「本契約問題の早期探知につながるような監査が実施できなかった」
とされています。
監査委員会がどのような活動をしたのかについては、調査報告書には記載さ
れていませんが、内部監査が問題を指摘していない以上、監査委員会がこれ
を知ることはなかったものと考えられます。

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■ 3.かんぽ生命のガバナンス体制

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 「監査委員会」と書いたので、お気づきの読者もおられると思いますが、
かんぽ生命は指名委員会等設置会社です。みずほフィナンシャルグループ
日産自動車などは、不祥事を契機としてガバナンス体制を指名委員会等設置
会社に移行しています。
この体制をとる場合、指名、報酬、監査の3委員会の過半数社外取締役
あることが求められます。ただ、取締役会全体の過半数社外取締役である
ことは求められません。そのため、このガバナンス体制を採用しているから
といって、社外取締役が取締役会の過半数とは限りません。
かんぽ生命はどうかというと、2015年の上場当初から指名委員会等設置会社
であり、取締役の過半数社外取締役にしていました。すなわち、冒頭の142社
に含まれる会社でした。
指名委員会等設置会社であり、取締役の過半数が社外という最強のガバナンス
体制を採用するかんぽ生命で、不正募集問題への適切な対応ができなかった
ことになります。

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■ 4.何が問題だったのか

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指名委員会等設置会社は、米国流のガバナンス体制を日本にも導入する趣旨で
法制化されました。しかし、同様のガバナンス体制を採用していた米国のエン
ロンは、サーベンス・オクスレー(SOX)法成立の契機になった巨額粉飾事件
を起こしています。エンロンでは、有名大学教授など、CEOのお友達を社外取
締役としていたということが問題であったとされました。
指名委員会等設置会社+社外取締役過半数という一見最強に見えるガバナンス
体制でも、誰が取締役か、取締役会がどのように運営されているか、が重要な
分かれ目になると考えられます。

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■ 5.かんぽ生命の社外取締役

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かんぽ生命では、上場以来7、8名の社外取締役を置いています。2019年6月の
株主総会後は、社内3名、社外7名の体制でした。この社外7名は、どういう人
か見てみましょう。各人の主な経歴をピックアップすると次のとおりです。
・元パソナグループ取締役専務執行役員(女性)
・元アイスタイル代表取締役(女性)
・現ワーク・ライフバランス代表取締役(女性)
・元検事長(現弁護士)
IHI会長
・現京浜急行代表取締役社長
・元住友商事専務執行役員
経営経験者と法律専門家で構成されています。ダイバーシティ対応として女性
3名を選任しています。残念ながら、この中で金融の専門家は一人もいません。
業界のプロであれば、報告内容について合理性がないことに気づく可能性が
あります。取締役会で話題にならない事項でも、業界の課題を熟知していれば、
それに対してどのように対応しているか、取締役会で質問し、追及すること
もできると思います。
一方、監査委員会のメンバーは次のとおりでした。
監査委員長:元検事長(現弁護士)
監査委員:元パソナグループ取締役専務執行役員(女性)、
元アイスタイル代表取締役(女性)
住友商事専務執行役員
検事長が監査委員長になっています。顔ぶれを見ると、法律の専門家はい
ても監査・会計の専門家は一人もいません。
特別調査委員会による調査報告書によれば、常勤者が1名とされていますが、
2018年3月期までは、監査委員会事務局統括役(社内取締役)が常勤でしたが、
2019年3月期は全員が社外取締役であり、常勤はいなかったと考えられます。
監査委員会がリーダーシップを取って監査を実施していたのではなく、監査
委員会事務局や内部監査部門に「お任せ」になっていた可能性が高いと思い
ます。このため、「大きな問題ではない、すでに解決策を取っている」とい
う報告に納得していたのだと思います。
かんぽ生命は、社外取締役過半数であっても、ガバナンス強化の役に立っ
ていなかったという事例になってしまいました。社外監査役の「実効性」が
非常に重要です。差し障りのない形だけの社外取締役を人選していたのでは、
会社のためにはならないだけでなく、大きな損害を招くことになってしまう
ことが、この事例からよく分かります。

今回もビズサプリ・メールマガジンをお読みいただきありがとうございました。
ビズサプリでは、コーポレート・ガバナンスのご相談をお受けしています。
お気軽にお問い合わせください。

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