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Vol.059 東芝の特注指定解除は勇み足

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.063━2017.11.01━━
【ビズサプリ通信】


▼ 東芝の特注指定解除は勇み足


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 結構暖かな日が続いたと思ったら、急に11月下旬並みの気温に下がりまし
た。季節外れの台風が毎週のように来ます。10月の長雨も127年ぶりとのこ
と。皆様、健康管理にはご留意ください。
 さて、東京証券取引所は10月12日付で、東芝の特設注意市場銘柄(特注)
の指定を解除すると発表しました。これによって、上場廃止の恐れを周知する
「監理銘柄(審査中)」の指定も外れました。そのため東芝の株価も少し上が
っているようです。今回の【ビズサプリ通信】では、この東証の指定解除に
ついて考えてみました。

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■ 1.これまでの経緯

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 東証は、2015年9月、東芝による過去5年度分の訂正報告書の提出を受けて、
特設注意市場銘柄に指定しました。東芝は、その1年後の2016年9月に内部
統制の改善状況を報告する「内部管理体制確認書」を東証に提出しました。
しかし、東証は改善が不十分として特設注意市場銘柄の指定を継続することに
しています。
 東証は、特設注意市場銘柄に指定した1年半後の2017年3月には、上場
廃止となる恐れがあることから「監理銘柄(審査中)」に指定しました。
東芝は、このタイミングで東証に対して、再度「内部管理体制確認書」を
提出しました。この東芝による内部統制の改善状況の再度審査を開始する
時点で、東証は「監理銘柄(審査中)」に指定したということになります。
 このような経緯で冒頭のとおり、東芝の「特設注意市場銘柄」と
「監理銘柄(審査中)」の解除が行われたことになります。東証のこの審査は
「内部管理体制確認書」が提出された3月から10月まで7ヶ月かかったという
ことになります。

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■ 2.監査法人の監査意見は限定付き適正意見

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 この東証による審査の間に、東芝有価証券報告書を提出しています。
そこで明らかになったのは監査法人の監査報告書が「限定付き適正意見」
であったことでした。
 これは「6,522億円もの金額が、場合によっては全額前期の損失として
計上すべきであった」という限定事項でした。我々専門家から見て、
「こんな限定事項ありか? これなら不適正でしょ」としか考えられない
ものでした。
 この監査意見が不適正意見なら即上場廃止になっていたところでした。
新聞紙上では適正意見が出たので、次の課題は当期末に債務超過が回避できる
かどうかだ、という論調に変わりました。
 限定付き適正意見というのは、決算の一部分が適正でないということです。
それも東芝の場合、上述のとおり最大6,522億円もの金額が当期の損失と
すべきでないというものでした。実は、この6,522億円が絶妙な金額で、
もしこの金額を前期(2016年3月期)に損失として計上していたら、前期決算
はギリギリ債務超過にならない金額でした。もしこの金額が6,800億円だっ
たら、2期連続債務超過になっていたところです。すなわち、監査法人
よる限定付き適正意見はスレスレのウルトラCだったのです。

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■ 3.内部統制は不適正

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 限定付き適正意見は決算書に対する監査意見ですが、内部統制報告書に対す
る監査意見は「不適正意見」だったということは、あまり報道されていません。
東芝は「内部統制は有効」という報告をしていますが、これに対して監査法人
は「有効でない」と結論づけたため、監査法人は「不適正意見」を表明したの
です。
 東証は、東芝が提出した「内部管理体制確認書」を審査したことになって
います。監査法人が「内部統制は有効でない」としているにも関わらず、
東証は特注の指定解除をしたことになります。

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■ 4.内部統制の懸念は解消されたのか

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 いくら監査法人の監査意見が限定付き適正意見(決算書)であったり、
不適正意見(内部統制)であったりしても、過去の状況を示しているにすぎ
ない、という反論があると思います。決算と内部統制は2017年3月期以前の
状況です(厳密には内部統制の評価は期末時点)。東証は現時点と将来を見て、
特設注意市場銘柄の指定解除をしたのだと思います。それでは、東芝の現在と
将来の問題が解消されたのでしょうか。
 報道されているように半導体事業が2018年3月末までに売却できないと、
2018年3月期で2期目の債務超過になり、東芝上場廃止になります。
懸念材料はこれだけでしょうか?
 実は、2017年3月期の東芝の連結財務諸表にはウェスチングハウスグループ
が含まれていません。その結果、ウェスチングハウスグループの内部統制は、
評価対象から外れています。筆者はこれが重要な問題と思っています。
 ウェスチングハウスグループという一種の「爆弾」を抱えた状態であるにも
関わらず、その会社(子会社を含む)の決算が除外され、内部統制も評価対象
に入っていないという状況なのです。破綻した会社は連結から外しても良いと
いう米国会計基準によって、これらの会社は連結から除外されていますが、
これによって内部統制の評価対象も自動的に対象外となります。
 これは筆者の推察ですが、東証に提出した「内部管理体制確認書」に
ついてもウェスチングハウスグループは除外されていたのではないかと思い
ます。ウェスチングハウスの内部統制に問題があれば、子会社のウェスチング
ハウスの決算が適切にできない可能性があり、ウェスチングハウスの正しい
財務情報がタイムリーに親会社の東芝に伝わって来ないということになります。
それは後になって、減損、債務保証損失、損害賠償損失のような形で現れると
思います。そのような状況では東芝の決算が適切にできるとは思えません。
 これまでも、ウェスチングハウス関連で、急に7,000億円を超える減損が
計上されたことが報道されています。この大部分が限定付き適正意見の対象に
なっていると考えられます。これは減損の対象になる資産がそもそも計上され
ていない状況で、資産(のれん)を計上すると同時に減損処理したことから
発生しました。ウェスチングハウスグループの内部統制がわからない状況では、
何が起こるかわからないということが言えます。
 以上から、東証による特設注意銘柄と監理銘柄(審査中)の解除は、
「勇み足」と言わざるをえません。

 本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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